オバマ大統領の皇室観

最近、痛快に思ったことがあります。11月14日、天皇、皇后両陛下はお住まいである皇居・御所にオバマ大統領を招き、昼食を共にされました。
正午、両陛下は御所の玄関にお出ましになり、オバマ大統領を迎えられたのですが、そのときの写真が新聞紙上で公開されました。私はTVを見ないものですから、それが映像でどのような解説のもと報道されたのかは知りません。
TVを見ないのは、嫌いだからではなく、見だすと止まらないという困った癖によるものです。新聞で見る限りオバマ大統領は、90度に腰を折り、陛下に握手を求めています。陛下はにこやかな軽い会釈のもと、これをお受けになりました。陛下に少し控えて皇后様も微笑んでいらっしゃいます。
実はこの90度に腰を折るのは、神様への正しい挨拶の仕方なのです。神社に詣でて神前での二礼二拍手一礼の作法をとるとき、腰を90度に折るのが正しいということを、春日大社の宮司から教えて頂いたことがあります。オバマ大統領はそれを知ってか識らずか、腰を90度に曲げて挨拶をしたのです。
思いが識らず行動に出るとしたら、オバマ大統領は皇室の大フアンであろうと想像します。というより、オバマ大統領は皇室をよく理解しているのではないでしょうか。
天皇陛下は、日本の八百万の神々の上に君臨されていらっしゃる。従って天皇陛下が、伊勢神宮にお参りされたとしても、鳥居をくぐることはないのだそうです。そのように見てくると、オバマ大統領は我が日本国と日本国民に、最大限の敬意を表したのだと考えてもあながち穿った見方ではないものと思います。
私はこの写真を見たとき、もう一つの写真があざやかに脳裏をよぎりました。それは昭和20年9月27日、昭和天皇がマッカーサー元帥と会見されたときの写真です。
マッカーサー元帥は、無ネクタイで、腰に手を置き無造作に立っています。その横で礼服を召された昭和天皇が緊張の面持ちで直立不動の姿勢をとっていらっしゃる。
私のような戦後世代から見ても屈辱的な写真であることに間違いありません。義務教育の教科書にも、この写真は確か掲載されていたと記憶しています。GHQは明らかに意図を持ってこの写真を利用しました。
 昭和天皇は、ご自身をお捨てになるお覚悟で、国民の命と食料の保証の願いに行かれたのです。陛下ご自身、本当に命をお捨てになるつもりであったのだろうと思います。しかし明治憲法下においても、政治から生じる如何なる責任も天皇にはありませんでした。つまり無答責ということです。
そのようなことは敢えて承知の上で、昭和天皇はマッカーサーとの会談に臨まれたのです。
感激したマッカーサーは、日本への食糧援助を惜しみませんでした。
 これは皇室外交の凄み、と思って差支えありません。
しかし現在少なからぬ日本人が皇室を見る目は、昭和20年のこの写真と同じ目線ではないでしょうか。皇室を自らの内にあるものだとは考えない。国民と皇室の関係を不二一体と捉える感覚が失せてしまっているように思います。従ってオバマ大統領が、90度の角度で陛下に礼を尽くした写真を見ても、外国公人が、奇を衒ったぐらいにしか感じないのではないでしょうか。「天上の月を愛でて、掌中の玉を逸す」。今の日本人は、政治家を初めとして、そんなことばかりをしているように思います。
 ところで鳩山首相は11月13日午後6時50分からオバマ大統領との会談を持ちました。そのあと14日未明、APEC出席のためシンガポールへと向います。
 外国からの、しかも最重要国賓であるオバマ大統領を、置いたままにしてです。
一般家庭にあっても、挨拶と食事もそこそこに来客を自宅に泊めておいて、あるじ夫婦が旅行に出かけてしまったとしたらどうでしょうか。しかもその来客は突然に来たものではありません。事前に分っていたことなのです。今上陛下ご夫妻は、時の内閣の不躾を、それこそ皇室の品位で以って見事に補われたのです。
 もっともよくわからないところがないわけではありません。オバマ大統領の訪日は、テキサス米軍基地での乱射事件があって1日遅れました。そのことが日本側との日程調整がうまく咬み合わなかった原因となったのかも解りません。もしそうであれば、鳩山首相に同情の余地があります。
しかしだからといって、天皇皇后両陛下のオバマ大統領への接待が決して色褪せたものとはなりません。鳩山さんが首相になって、アメリカとの関係がぎこちないものになってきていることは事実です。天皇陛下ご夫妻がその間隙を埋める役割を果たして下さったと見てもいいでしょう。
ところでもしオバマ大統領が90度のお辞儀をし、握手を求めた相手が、仮に中国国家主席の胡錦涛だとしら、中国はその写真をどのように利用するのでしょね。