還暦の宴
村の渡しの 船頭さんは今年60のおじいさん
年はとっても お舟をこぐときは 元気いっぱい櫓がしなる
それ ぎっちら ぎっちら ぎっちらこ
雨の降る日も 岸から岸へ ぬれて船こぐ おじいさん
今日も渡しで お馬が通る あれは戦地へ行くお馬
それ ぎっちら ぎっちら ぎっちらこ
村の御用や お国の御用 みんな急ぎの 人ばかり
西へ東へ 船頭さんは 休むひまなく 船をこぐ
それ ぎっちら ぎっちら ぎっちらこ
昔、60歳はおじいさんであった。もう10年も前になると思うが、PPK運動をしているサークルに入っていたことがある。入っていたと云ってもたかだか半年ぐらいの期間で、1回の参加費は5千円程度、食事をしながら、メンバーの誰かの談話があり、最後は童謡や昔の流行歌を歌って終わる、という他愛のないものであったように思う。3回ぐらいは出席しただろうか。PPKとはピンピンコロリの略。
最近知己を得た方で、大手メーカを60歳で定年退職、そこで培った技術力を生かして会社を起こした方がいらっしゃる。お会いしてみると若い。
経営資源として人・物・金というのがよく上がるテーマであるが、中小の企業にはそのすべてが欠けていることも多い。経営資源の最たるものは人であるから、こうした定年組で意欲と技術のある人が、町の企業に来て下さることは、大いに歓迎したいところである。
7月25日と26日、誘われるままに、池原ダムキャンプに参加した。13名であったが、私などは若い方であったと思う。ただ最近人とお会いして、年齢は私より上と思っても、聞いてみると果たして私より若いということがよくある。このメンバーで私が若い方であったというのは、思い過ごしかも知れない。しかしそのうちのお二人は古希を迎えられたばかりとのことであったから、まあこのお二人に限れば私より、かなりの年配であることに違いがない。
この13名、いたって健啖でいたって元気なのである。初日は川釣りとしゃれこんだが、蛭に悩まされた。2日目は片道2キロほどの坂道を難なく往復した。歩いて行った先は前鬼山、役行者が祀られているお堂。2日間とも落伍者なし。私は世話をされる方に回ったが、明らかに世話をすることが好きな方が3名はいらっしゃった。
WHO(国連の世界保健機構)によると、65歳以上の人口がその国の人口の7%を超えると「高齢化社会」。65歳以上の人口が14%以上になると「高齢社会」。21%以上になると「超高齢社会」となるらしい。
日本は2007年に世界で初めて「超高齢社会」に突入したそうである。
私の周りにも60歳丁度で死んだ男がいる。また60歳を目前にして、今現在、死の淵を彷徨っている男もいる。他方においては、このキャンプメンバーのように元気いっぱいの60歳台もいるのである。
命というのは、必ずしも自ら管理できるものでもあるまいが、病気勝ちの人というのは、自らの病はお医者の管轄下にあると考えているふし.があるように思う。
お医者さんは対象である病の治療はしてくれても、その淵源を探って根本からの養生を施してくれるものではない。それに病というのは気からではなく、口から入るものだそうである。食べ物も然りであるが、言葉にしても口が禍する。「私は若死にするだろう」などと呟けば、それが暗示となって腑に落ち、本当に早死にするだろう。行きがかりで殺されて死ぬ人なども、大方は口が招いた災いだろう。
最初に紹介した「船頭さん」。この船頭さんには、明確に「公」の自覚がある。口を慎み、「公」の自覚があれば、高齢を生きることも楽しいものになるのではないか。「公」といっても、「船頭さん」が創られた時代とは違うのであるから、硬く難しく考えることはない。社会への若干かつ積極的な配慮、思いやりといったことであろうか。