ある調査

 2日続けてある会社の調査を受けました。久しぶりの調査です。調査を受けた先は、法人で売上規模は年間8億円ほどです。
 調査官は2人。この会社は書面添付をしています。書面添付というのは、税理士事務所が出す完全性宣言書と考えて下さい。つまり、私の事務所が、会計帳簿を精査した上で、完成度が高いと認めた関与先について、当事務所の関与度合いと1年間に渡ってどのような、帳簿精査をしたかを開陳して、これを法人税の確定申告書に添付するというものです。
 これで調査件数がすっかり少なくなりました。書面添付をしますと、調査に至る前に私が所轄税務署から呼び出しを受けます。そこで質問を受けるのです。今回も呼び出しを受けましたが、当局は最初から調査に行くことを予定して、制度的形式上、私を呼び出したようです。調査は、2日間に渡って在庫表の確認と売上の精査に終止しました。
 調査官の2人は、それぞれベテランでした。しかし最初から所得の増差額を出して税額を増加させるつもりはないようにも見受けました。
 つまり2日間に渡って、ひたすら調査事跡を残すために、資料収集をしているようなところがありました。実はこの会社4年前にも調査を受けています。
 4年前にも2人のベテラン調査官がきました。このときの2人は見た目にも和気藹々としていることが見て取れました。2人は2日目、固定資産の計上漏れ30万円程度を非違事項として指摘し、昼で退散しました。私の推測ですが、すぐ署には帰らず映画でも観て帰ったと思います。今回の2人は2日目も4時まで資料作りに精を出していました。
 調査を終え、たいしたことが無くても帰らない調査官がいます。多少怪しい、あるいはきな臭い、費用処理が正しいのかどうか、というような曖昧な点を指摘して、企業側が費用と認識しているものを、所得として出して欲しい、というようなお願いをされることがあるのです。
 この固定資産30万円はそのような性格のものでした。しかし2日の朝、昼までで調査を打ち切ると宣言していましたから、まあそれだったら、ということで、この30万円の修正申告に応じたわけです。
 今回の調査は、そのようなこともなく2日間みっちりと行われました。しかも呼び出しを受けたときに、私が何もないと言っているにも関わらず、是非調査をさせて下さいと言われた経緯もあって、少々のことでは絶対に譲らないつもりでおりました。
 しかし調査を受けるというのは、内心不安を伴うものです。私の事務所が関与先の会計帳簿が正しいと判断をして書面添付をするのは、結局心証に基づくものでしかないからです。
 ただ最近の調査で税務署が威圧的であるという印象はなくなりました。それは一つには税務署の意識改革の結果だろうと思います。それともう一つは、私の年齢から来るもので、私より年上の調査官は絶対にいないということです。最近は署長であっても気楽に話せる自分に驚くことがあります。
 しかし国も大変ですね。今年の国税収入は40兆円を切るのではないでしょうか。橋下知事は、大阪府を黒字にしたと、最近マスコミが報道しました。エライですね。
入るを計って出を制す、国も国防と治安以外の予算の財政支出を削るべきです。めったやたらと補助金や助成金を出すのは、結局人々の生きる力を弱めるだけです。あの2兆円問題など、国民を愚民扱いしていると思います。しかもこの2兆円の手続きをするための予算はいかほど掛かるのでしょうね。もういい加減ヨサンか。お後がよろしいようで。

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