イチローが講演をした

イチローの講演を聴いた、という話をN証券会社のWさんから聞いた。Wさんは時々私の事務所に来てくれる。シーズンオフでイチローも日本に帰っているのだ。講演は東京であったそうだ。その話の中身を忘れないうちにと思って、まとめたのが次の内容である。
 Wさんの報告によると、イチローの話は面白かったらしい。
Wさんが聞いて感激したところを、私がWさんから聞き、それを認めたものであるから、中味はぶれているかも知れない。
私は野球に興味はないが、イチローが類まれなるプロ選手であることは知っている。またイチローが数々の記録を持っていることも知ってはいるが、その具体的な内容は知らないし、興味もない。
 何でもイチローは、大きな記録を意識して野球をしているわけではないらしい。毎日毎日、一打一打に改良工夫をしているらしい。この辺は大成した事業家に似ている。
 TVで視るイチローのインタビューがそっけないのは、あれは演出であって、例えばサイン会などでは、また別の顔を出すらしい。それは、TVのインタビューでサービスをしてしまえば、サイン会などでの自分のイメージが崩れた場合に困るからということであった。顧客サービスをよく心得ているのである。
 日本人は傾向として、常に自分より上の存在を認めているから謙虚である。同じ野球選手でもアメリカ人などは、いい記録を残した場合、有頂天になって、人に接する態度も横柄になるらしい。つまり自分が一番偉いと思ってしまうらしいのである。日本人選手がいつも謙虚に振る舞い、慎ましやかな言動で、大きな仕事をすると、アメリカ人などは、気持ちが悪くなるらしい。というより恐怖を感じるらしい。従ってイチローは戦略としてもこの謙虚さを持ち続けているとのことである。
 最後に日本得へのメッセージとして、次のようなことを言ったそうである。今は日本も景気が悪く大変な時期でしょうが、朝、家をでるときはニコニコ笑いながらにしなさい。それは決して、例えば経済的に苦しくなったからからと言って、シニカルにその状況を笑う、というようなそうした笑いであってはいけません。「俺は川原の枯れススキ、同じお前も枯れススキ」などは、夢歌うなということだろう。肝に銘じよう。
 またこうした話もしたそうだ。イチローがアメリカで記録を作ったとき、王さんからすぐさま連絡があって、それは「おめでとう、これからも頑張ってください」というようなことであったあったらしい。方やもう一人、日本のプロ野球では名を売ったHさんからも、電話があった。Hさんは何でもイチローに喝を入れられたらしい、その喝の内容はアメリカでの記録は記録でないというようなことらしかった。素人目にもイチローは既にHさんを遥かに凌いでいる。そうしたプライドはイチローにもあるだろう。
 イチローはこの王さんは尊敬するが、Hさんは軽蔑しかできないというようなことであった。そういえばこのHさん、野球で名を売っている頃から、出自が貧困であることをバネにしてのし上ってきたことを自慢しているようなところがあった。
 Hさんにすれば先輩としての軽い励ましのつもりであったかも知れない。しかしイチローには通じなかった。Hさんは時代の変化を読み違えたのだろう。
 すべての点においてイチローは進化した現在人であって、今という時代をよく知っている。また彼はプレーと振舞いが流麗であることにおいて一流を証明した。Hさんは今や化石なのである。