税務調査

最近、脱税に絡んだ話が新聞紙上を賑わしている。注意深く読んでいると全国紙のいずれかに、毎日のようにどこかの法人が脱税した話が載っている。出てくる名前は世間に良く知れた会社であることが多い。
 誰が新聞社に囁くのであろうか。税務署サイドには守秘義務がある。納税者側には世間体がある。普通であれば出るはずがない。
 しかし、どちらかがリークしているのである。あるいは当局に、あるいは自らの会社に恨みをもった官吏や社員であるのかも知れない。しかし、官吏や社員であれば、もしそれがバレたら自分の首が危なくなるから、めったなことで垂れ込むこともないだろう。
 いずれにせよ全国紙が載せるのであるから、ガセネタではあるまい。この手の記事を見るにつけ、いつもそのルートが気になるのは職業柄である。
 それにバブルが弾けて以降、経済が低空飛行しているときなら、税務調査も少なかったし、また調査においても若干の手心が加わったであろうが、逆に、この手の記事が多くなってきたのはやはり景気が上向いてきている一つの所作であろう。
また国にしても財政赤字の問題を解決することは喫緊の課題であるから、景気の上昇で調査にはずみが付くということもあろう。実はわが事務所でも、この春、2件の調査に出くわした。詳細は書けないが、2件とも調査官の勢いがよすぎるのである。勢い余って仕切り後、こちらが待ったをかける間もなく、一人で土俵を飛び出してしまったようなところがあった。勿論、土俵を割れば割った方の負けである。
会計事務所に勤めだした30年ほど前の駆出しの頃、担当先法人の税務調査時、調査官がその法人の引出をあけた途端、数百万円が入金された預金通帳が出てきた。年齢からすればベテランの調査官と思えたが、その事実だけで青色が取り消し、更正を打ってきたのである。青色取消後であるから、理由付記は省略されている。しかしこれは、異議申立だけで回復した。当然である。
春の調査は、この事件を思い出させるようなところがあった。
いずれにせよ、今後調査は厳しくなることが予測される。しっかりした帳簿は結局、納税者を救う。確かな帳簿をつけることは義務というよりは、納税者の権利である。
会計事務所に帳簿丸投げで、領収書や納品書まで渡して記帳を依頼するのはこの権利を失うことでもある。

前の記事

産卵と孵化

次の記事

情報過多