33コストをどう考えるか(2)
中小企業経営者のコスト意識は、人件費にのみ向けられています。TKCの経営指標を見ますと、製造業などの従業員数はおよそ20人で止まります。これは社長1人が人を使う場合の限界であると私は理解しています。
また直接的に製造に従事する社員を重宝しますが、間接人員の重要さには気が付かない場合が多いものです。
ここで間接人員というのは、現場の作業者の要望を汲んで指示命令を修正する者であり、工程間の連絡係であり、顧客と製造現場との調整役なのですが、その必要性が、人件費の嵩に目が眩んで見えていないのです。
中小企業においても、原価計算・管理会計など計数管理の重要性は論を俟たないのです。原価計算などの計数管理が必要なのは、物作りの現場を客観的に観察するためです。
また人権費が高いため製造現場の一線にパートやアルバイトが投入されることが多いのですが、そうであれば尚更、間接人員の重要性が増して参ります。
またこうした問題意識というのは、極少数の経営者にはよく理解されていることも事実で、正しく理解している社長がいる会社というのは、経営が上手くいっています。
昔は社長が仕事を取ってきて、それをライン管理で従業員に生産をさせるだけでよかったのですが、今や仕事への要求が品質面を含めて厳しくなっており、また発注側にもファブレス化の流れもあるのでしょうが、設計はできても、それを品質に落とし込み、あるいは評価する目が無くなっているように思います。
その反面、品質基準は厳しく、その要求にキメ細かく応じていくには、社員の自発的かつ積極的な業務への参画が必要なのです。
ところが、社長には社員との人間関係を良好にすることが、要求される品質の製品を作ることであることへの理解がないのが一般です。中小企業をスマートで、利益体質の会社にするためには、まず労使ともに企業理念を共有するところから入らねばなりません。
また社長が経営理念の前に平伏すぐらいの気持ちがあり、それを社員も積極的に支持したとき、経営は上手くいくものです。
つまり社員に給与以上の慶びを与えなくてはいけない、ということです。その中小企業の、この世に存在する価値がどこにあるかを示し、社員の共感を得るということでもあります。