32コストをどう考えるか(1)

 金融円滑化法の適用下にある不良債権金額はおよそ80兆円(約290万件)です。

これらの殆んどは回収不能と云われていますから、今年の暮れから来年にかけて、中小企業の倒産が連鎖を伴って続出することになります。

この背景として経営環境の悪化ということはあるにしても、環境の責任にすれば、問題の本質は解決しません。

これまでのおさらいのようなことを書きますが、経営が上手く行かない企業というのは、経営に偏りが観られるものであり、それは詰まるところ経営者の責任です。

いや無理にでもそう考えなくてはなりません。
責任を社会や経営環境の転嫁したのでは、問題は解決しないのです。

中小企業の経営者を観察していますと、やはり従業員との人間関係が良好ではない、という大きな特徴を認めることができます。

それは場合によっては暴力的であり、または、気遣いの無さであり、あるいは仲良くしょうとはしているのであるが、従業員の肩に肩車をしたままの状態で、その従業員に握手を求めに行くような尊大さが見て取れます。

しかもそのことには気がついていません。

中小企業の後継者は、その社長の身内から出ることが多く、最初から後継を約束されているため、先代と同じく経営の勉強はしていないのが普通です。またそこに勤める社員さんも、日常業務には懸命に取り組むにしても、経営の勉強はしていません。

そのような意味では中小企業に経営者はいないのです。意識するしないに拘わらず、暴君として君臨する社長はいますが、社員の能力を正しく評価し、その特徴を生かして、社員と一緒になって、経営にハーモニーを引き出そうとする経営者は少なく、従業員は物として扱われることが多いのも事実です。そうした乱暴さというのは、経営者のコスト意識にも現われてきます。

自らの交際費は際限がなく、従業員のおやつ代には厳しいのです。「一事が万事」とはよく言ったものです。もしあなたの会社の社員さんが、あまり働かないのであれば、それは社員さんの責任ではないのです。

それは社長、あなたがこれまで社員さんに与え続けてきたあなた自身のイメージの結果であり、経費の中で一番高い人件費が有効に使われていないということなのです。