不況脱出大作戦~9社員をモノと見ていないか

その業界全体では売上も利益も伸びているのに、当社は経営が低迷していて、経営状態も危うい、というような状態が出現したとします。社員さんは素直で、律儀によく働いている。技術水準が低いわけでもない。しかも経営コンサルタントを入れ、社内会議を重ねて、問題の把握もできているのに、赤字基調の経営が続いているようなケースを想定して下さい。
このような企業は、経営陣と社員の心が離反していることが多いのです。
労使双方の心が離反するのは、経営者が社員をモノだと思っているから、あるいは社長が社員に関心がないのかも知れません。
ある経営勉強会の席上、某会社の経営者が、次のような発言をしました。「右腕として期待をしていた社員が、ある日突然退職届けを持参し、退職の理由を一切話すことなく、辞めていった」というのです。その社長は、その勉強会仲間では名経営者として名が通っている人でした。
推測ですが、その社長は、自らを経営の勉強は人一倍している一流の経営者という風に捉え、己の無謬性を信じていたのだと思います。
2代目の方ですから、おそらくは社員の経験もないのでしょう。このような場合、社員の心情には想像力が働かないのです。勿論すべての2代目がこのようなことではありませんし、初代でも起こりうることです。誤解しないで下さい。社員が辞める理由を社長に告げなかったのは、長年の鬱積の中で、告げても無駄であると判断したからです。社長への信頼を喪失していたのです。
ところが社長は、全く対等に付き合ってきたと思っている。これまでその社員に肩車をしたままで、握手を求めていたという認識がないのです。
社長が右腕と期待した人ですから、それなりに見識もあり、いい待遇も与えられていたはずです。この不景気に会社を辞めるというのは、如何なる理由によるものであれ勇気が要ります。社長からすれば、その社員は良く働く機械と同等のモノであり、両社には人間同士の交流はなかったのです。
中小企業では有り勝ちなことです。社員が辞めた理由も社員の側にあると思っているのでしょう。上から目線で人を物と見て、そこに馴れてしまえば、労使間の関係改善はできません。人がモノになれば、モノは口をききませんし、その意見が経営に反映することはありません。この会社では、同じことが他の社員で起きてくるはずです。社員はモノではなく同士なのです。
ここに気が付くだけで、社長の心がけも変わります。そうすれば社員の心も変わってまいります。