断食入門

 静養院断食療養所は生駒市門前町にある。近鉄生駒駅からケーブルに乗って宝山寺駅で降り、北西に100メートルほど登るだろうか。その南側は宝山寺、真言宗の古刹だ。
 予約は今年の1月頃入れた。4月29日から5月5日までの6泊7日コース。
4月29日15:00 道場に到着
15:30 入所手続きをとる。入所動機、年齢、性別、職業等を記載
 断食の説明を受けた後、紙袋に入った箸1膳を与えられる。
16:00 夕食 白粥1膳、小皿の煮物1皿、味噌汁1杯
17:00 シャワータイム(当日はシャワーのみ)、風呂場は1人ずつ交代で入るようになっていて、その都度呼びに来てくれる。道場は91年の歴史があるということで、建物は木造、古びてはいるがよく使いこなされ清掃が行き届いていて、清潔である。
 18:00 娯楽室にて勤行 懺悔文 1回
般若心経 3回
回向文 1回
正座の辞 1回 この間約15分
※この勤行は、1日のけじめとして、やっているようで、宗教性は感じられなか
った。参加するかしないかは入所者の自由。
体重 約67キロ
※テッシュ、置時計、手鏡は持参すべきであったが忘れた。一番困ったのがテッ
シュ、幸いポケットテッシュをいくつか持っていたので、事なきを得た。
4月30日
7:00 娯楽室にて勤行
7:20 朝食 白粥1膳、昆布海苔の佃煮、味噌汁
9:00 健康のための講話が所内に流される、この間約40分。
 これは入所期間中毎日続いた。初代所長先生の録音によるものであったが、内容は濃く、言葉の使い方からして 博学多識で、研究熱心かつ人格者であることが感じられた。
 11:00 昼食 白粥、野菜のあんかけ、酢のもの
 14:20 入浴(本日はシャワーではなく入浴を命じられる)
 16:00 夜食 重湯1杯 いよいよ本格断食の始まりである。
 18:00 娯楽室にて勤行 入所者は14、5名、勤行参加は自由のようで、
 5名ほど、
5月1日 
7:00 勤行
9:00 講話の館内放送
11:00 暇を持て余していたところ、娯楽室にてK司法書士から話しかけられる。栃木県の那須から来ているとのこと。ここの常連だそうで、昨年は51泊したということであった。
 13:40 宝山寺まで散歩、人影多し、屋台の焼きもちが美味そうに見えた。
 15:20 この日はシャワーを命じられる。
 18:00 娯楽室にて勤行
※ 相変わらず勤行に参加のメンバーは限られている。勤行の後、顔見知りとなった人と話をしていたら、1日水2ℓは飲まなければ駄目だと教えられる。ただ私は入所期間中最大で1日1.5ℓが限界であった。
5月2日
7:00 娯楽室にて勤行 
9:00 講話の館内放送
 18:00 勤行
 体重64k
※終日肩と背中それに左肘が疼く、万年の肩凝りと、最近感じていた腱鞘炎のようなものが快方に向かっている痛みと思う。
5月3日
7:00 勤行の時間(寝込んでしまい、参加できず)
7:20 重湯1杯 梅干1個
9:00 講話の館内放送
 11:05 重湯1杯 梅干1個
 13:40 シャワーを命じられる。
 17:00 白粥1膳。野菜と魚の練り天の煮付け1皿、牛蒡に胡麻を絡めた揚げ物1皿
 18:00 勤行
 18:40 宝山寺散歩 夕刻せまる境内は閑散として人影少なし。
5月4日 
7:00 勤行
9:00 講話
 11:00 白粥1膳、おからと人参やこんにゃく等の煮物1皿、胡瓜とシラスの和え物
 15;20 入浴を命じられる
 15:40 宝山寺まで散歩、夕刻とあって屋台の店じまいが始まっていた。
 16:10 夕食 白粥1膳、蕗と筍の煮付け1皿、ぜんまいのようなもののおひたし
 18:00 勤行
 体重63k
20:00 院長より事務所まで呼び出しを受ける。
※修了書と断食療法の効能を説いた色紙を頂戴する。院長御年80歳、歯は丁度
20本あるとのこと。色紙はなかなか達筆である。何とか読み下して翌日読み方が正しかどうかを3代目に確認した。次のように書かれていた。
[断食療法とは、体内の過剰栄養分の消耗と重要臓器に対す
る積極的安静と潜勢せる潜在能力の活用と病気予防にある]

5月5日
7:00 勤行
7:24 朝食 白粥1膳 なめこ味噌汁、半熟卵、小魚の佃煮のようなもの
9:00 講話
 10:40 K司法書士から紹介を受けていた、古本屋キトラまで歩くことにした、雲行きは怪しいが、当分雨の心配はなさそう、宝山寺から麓の近鉄生駒駅近くまで、参道沿を降りた。周りは昔の遊郭を忍ばせる小料理屋が多かった。キトラは生憎定休日。タクシーで帰る
 11:10 昼食 白粥1膳、マカロニとピーマンなどをマヨネーズで和えた物(これは中皿、今までで1番量が多かった)、みかんの缶詰
※当初は気づかなかったが、段階に応じて白粥も5分粥、7部粥、殆ど通常の飯に近いような粥というように、すべて細かく焚き分けられていた。

閑話休題
 娯楽室に次のようなものが貼られていたので写す。ピータードラッカーは荻生徂徠に学んだのかもしれない。
 よい人材を得るために  - 荻生徂徠 ―
 1人の長所を始めより知らんと求むべからず
 1人を用いて始めて長所現るものなり
 1人はその長所のみを取らばすなわち可なり、短所を知ることを要せず
 1己の好みに合うもののみを用いるなかれ
 1小過をとがむるなかれ、ただ事を大切になさば可なり
 1用うる上はその事を十分にゆだぬべし
 1上にあるもの下の者と才知を争うべからず
 1人材は必ず一癖あるものなり、器材なるがゆえに癖を捨つるべからず

 院長先生の話では、断食に要する合理的期間は予備断食と回復断食の期間を含め約20日とのこと。そのうち水だけの完全断食は10日。これを50歳から60歳代に1回やれば、終生病気知らずの体になり、その断食の後はちょっとジャンプしただけで、3メートルも飛び上がったような爽快感を得、心身一如の開放感に浸るとのことであった。
 すべてとは言えないが成人病なども治癒するらしい。また六感も冴え渡り、予知能力も身につくらしい。是非一度はそのような体験をしたいと思う。
入所して3日ほど経過した頃、頭が冴え(錯覚かも知れない)空腹感はないものの、肩や左肘、それに腰と太腿のあたりがだるくて、肉体というものは邪魔だなと感じたときがあった。
 実は退所する日、続けてあと2日ぐらい、家でも断食を継続しょうと思っていたのであるが、食欲を我慢できたのは退所後5時間程度の間であった。
 やはり断食は我流ではできなし、それなりの場所と指導が必要だ。また我流での断食はとても危険なことでもあろう。退所するとき、若先生から1週間は肉食をしないで下さいとの忠告を受けた。せめてこれだけは守ろうと思う。

この断食道場は創立後91年とのこと。初代院長は結構有名人でもあったらしく、イレブンPMでの収録写真もあった。
今の季節、鶯は終日鳴き渡り、眼下には生駒の市街が広がる。夜はその夜景が美しい。五月のさわやかな風が心地良い。是非20日間の断食に挑戦したいと思う。

前の記事

経営危機を乗り切ろう

次の記事

総選挙