不動産業界の最近

税理士業もそうですが、事業というのは景気に作用されないようにしておくのが望ましいことです。そうした思いもあって、事業再生に取り組もうと考えたのが5年ほど前です。幸い我が事務所のクライアントは好成績を維持してくださっているところが多く、破綻していくお客様は殆どありません。
 しかし今後のことは分かりませんし、一般的には不動産業を中心に経営が危うくなっている企業は多々出てきております。聞くところでは、不動産業界は平成初期のバブル破裂より、この度の況の方がより厳しいということです。
 バブルのピークは平成62年でした。その後の不動産の値下がりはすさまじく賃貸不動産などに値頃感が出てきたのが平成7年頃だったかと思います。
その頃から賃貸不動産への投資も盛んになり、当事務所のお客さんでも、積極的に不動産投資を行うところがでてきました。しかしまた今になって、安く手に入れたはずの不動産が下がり始めています。
銀行も今は不動産業には金を出しません。また不動産賃貸業の傾向として、入居者の質が悪くなってきています。家賃を払わない手合いが増えているのです。その理由を探りますと一つには、マンションを初め賃貸不動産が増加した結果、客の取り合いになっていて、結果として入居者の質が劣化している、ということが考えられます。もう一つの理由は、やはり所得が低下したため、家賃を払えない層がでてきているということです。
例えば5階の1室に不埒な入居者が入ったとします。そうすると、その左右上下の善良な入居者は、他のマンションを探して出ていきます。そのスパイラルに入ると、賃貸不動産としての商品価値は限りなく落ちていきます。
繁華街には飲み屋さんばかりが入ったビルが多く建っています。ここにきてテナントが家賃を払わなくなってきているそうです。いや不景気で払えなくなったといったほうが良いのでしょうか。
家賃を払わないからといって、追い出すとどうなるでしょうか。部屋は空いたままで次の入居者が見つかりません。こうしたビルはその全体が寂れていては客が寄り付かなくなります。夜はどの部屋にも、明かりが灯っていることが大事なのです。家賃が滞るからといって直ぐには追い出せません。
今は家賃を払う店と払わない店が入居るとして、そのうち示し合わせてどの店も家賃を滞納してくるのではないでしょうか。飲み屋をうろつく客は、あまり筋がよくありません。ちょっと顔が効くようになればつけをするようになり、つけが溜まればそのうち来店しなくなります。苦しいのはどの店も同じはずです。
余談ですが、私はスナックあまり好きではありません。客はカラオケで遊ばされたあげく、アルバイトのお嬢さんには、客の方が気を遣わねばならないのです。私は自分から進んでスナックに行くことはありません。
気が利いて、世故に長けた年増がいる店なら楽しいでしょうがね。スナックが流行らなくなるのは当然だと思います。
そうそう洞川(大峰山の麓)に面白いスナックがありますよ。ママのお歳は82歳。冗談ぬきで愉快になる店です。いずれこのホームページで紹介させていただきます。
また若い層の所得の水準は限りなく低いものとなりつつあります。この10年ぐらいは大阪の郊外で建売の新築住宅一軒の価格は2500万円から3000万円が相場です。最近はなかなか売れません。
それでもたまには売れます。それを買う人の年間所得は200万円から300万円です。ローンの返済は月々10万円としたら、生活費に回せるお金は微々たるものになります。
 今後物価や金利が上がってくるようなことでもあれば、この層の破綻が増加して参ります。でなくとも元々無理をした借金で買っています。そうしたローンを整理し、その不動産を安く買い上げて、そのまま賃貸で住んでもらう、あるいは住まないのであれば、リホームをして安く売ってしまうというような商売が流行るかもしれないと考えています。
不動産賃貸業という業態はなくなることはないでしょうが、商売としては成り立たなくなってきているように思います。今大阪でも分譲マンションが多く建ってきています。計画中のものもありますから、これから暫くはまだ建つでしょう。
マンションはスラム化すると考えられますから、買わないほうが良いのではないでしょうか。理由は単純です。分譲マンションの賃貸が増加し、入居者の質が悪くなっているからです。ハイパーインフレでもこない限り資産としての価値はありません。但し管理が行き届いているマンションなら話は別です。
今後賃貸不動産を経営されるのであれば、やはり入居者を選別しなければなりません。それはオーナー経営でないと出来ないことです。
マンションの経営はややもすると、管理会社に任せて、オーナーは管理には一切タッチしない傾向にありますが、これではマンションの質の維持はできません。従ってオーナーが責任をもって経営している不動産は、すたれることはなく大丈夫だと思います。むしろそうしたマンションは人気が集まり、多少家賃が高くとも喜ばれるのではないでしょうか。
最近当事務所に相談に見えた方ですが、6年ほど前に3棟の賃貸マンション買ったところ、買った当初はとても家賃収入がよかったのが、ここに来て客の入れ替わりが激しく、利回りが低下して困っているということでした。この方、マンション経営はこれが初めてとのことでした。そもそもマンション経営に手を染めたのは、本業の運送業が悪くなり始め、それを補う意味があったようです。
マンションを売る側の論理として、まず空室がない状態にします。それで販売をしますから購入時に利回りが高いのは当たり前です。
本業でも赤字を抱え、マンション経営でも借金を抱えていて、その借金の合計額はおよそ5億円ということでした。9月になったら必要書類をもって、また事務所にきてくれることになっています。ここで詳細を書くわけには参りませんが、お歳も召していらっしゃいます。また子供さん方は、既に立派な会社に勤めているとのことです。
夜、目が覚めたら寝られなくなるそうです。当たり前ですよね。
運送業と賃貸業の他に飲食業もやっていらっしゃるそうです。飲食業も本業である運送業の経営が悪化する過程で手に入れて、運営は他人に任せているとのことです。マンション経営も管理会社に任せているとのことでしたから、それらの経営がどのような状態にあるかは、数字は見なくともおよその想像はつきます。
この人の場合、お歳からして事業経営はもう無理でしょうし、事業を再生する必要はないものと判断しております。それに運送業も特殊な分野にでも特化していない限りそれほどの価値はないでしょう。まあ無借金状態になってお住まいが残ればよいなと、考えています。付録で老後生活資金のためこれも借金を限りなく低くしてマンション1棟の保全ができれば上出来でしょうね。
そのためには、利害関係者の協力を得なければなりません。
この人は、貸借対照表(B/S)と損益計算書(P/L)が皆目解らないと言っていました。
これとは別に最近相談に見えた方も、(B/S)や(P/L)は見たことがないと言っていました。私は、税理士業というのは、難しいことはなにもしなくとも、この(B/S)と(P/L)を弁舌巧に説明するだけで、十分飯が食えるのではないかと考えています。
 事業を承継し、あるいは新たに起業する人は必ず財務諸表の見方だけは知っておかねばなりません。経営者には常に売上と利益のみ追いかける人がいますが、これは間違いです。
資金的に追い詰められれば破産手続きを採るのが一般的で、気分的には楽です。しかしどん底から事業体を残せば世間はこれを認めます。また破産をしない方が債権者(金融機関)に対しても多くの返済ができるように思います。
いよいよ事業体が残せないとなれば、生活手段を残すべきです。そうすれば生活保護世帯が減ります。

前の記事

刀匠

次の記事

選挙