事務所業務の一端

法人税における外国税額控除の問題
 以下は外国税額控除で私が苦労した問題です。外国税額控除は簡単な問題と思っていましたが、この相手が例えば中国となるともう大変。法人税法の知識だけでは解決できません。日中租税条約及び日中交換公文、中国の企業所得税法にも当る必要が出てまいります。しかもこれらは日本の本屋さんでは見当たりませんでした。結局は某税務研究所と事前確認制度を通じた税務署への問い合わせで解決いたしました。なお事前確認制度は、文書回答ではなく口頭での回答でありました。詰めていって、最後に解らなかったのは結局中国の企業所得税ということになりました。もし来年同じ問題に対処するとすれば、やはり解らないのは中国企業所得税ということになりそうです。
 これは以下をお読み下さいました皆様に外国税額控除についてのご理解をお願いしたいというようなことではなく、会計事務所業務の一端を感じていただきたいということです。まあ結構大変なことをやっているのやなあ、と思って頂けたら幸いです。

 なお企業名、数値については当然のことながらすべて消しております。あしからずご了解下さい。

某税務研究所御中

 質問者名:倉矢勇
 件 名:外国税額控除の件
 関連税目:法人税
 1.質問事項
平成○年○月○日
税理士 倉矢 勇
中国子会社から日本親会社が配当を受けた場合の税額控除について質問させて頂きます。なお、円換算すべきものは、すべて円に換算したものとして例示しています。
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2.事実関係
日本親会社
 1 会計年度 4月1日~3月31日 
 2 中国子会社から配当を受ける会計年度
平成19年4月1日~平成20年3月31日(当年度)
 3 課税所得金額 
日本親会社の課税所得金額 #####円  
 上記に含まれる中国子会社からの配当(###円)
 4 日本の法人税住民税の税率 36%
 5 課税所得に対する税額
#####×36%=###円
 中国子会社(100%子会社)
 6 会計年度 1月1日~12月31日
 7 基本税率 33%(国税30%+地方税3%)
8 2005年度利益 –
 (1)2006年度利益 ####円(概算)(二免中により全額免除)
 (2)2007年度利益 #####円(概算)(二免中により全額免除)
合計  #####円

9 タックススペアリングクレジットによるみなし税額
2006年度  ####円(3(1)×33%)
2007年度  ####円(3(2)×33%)
10 配当を受け入れるのは親会社の当期(平成19年金4月1日から平成20年3月31)において予定しています。
日本への送金予定(配当) 税率 実際税率  
 2006年度  免税 ####円 10% 10%
 2007年度  免税 #####円 10% 10%
 合計  #####円
(外資企業所得税第19条1項、同19条3項)
11 実際に配当した部分に対応するタックススペアリングクレジット
(配当に対応する部分)
 2006年度 6,000千×33%= #####円
 2007年度 25,000千×33%= #####円
合計  #####円
※中国法人が独資企業(外国側100%出資企業)へ支払う配当については20%の税率で企業所得税が払われたものとみなされる(日中租税条約23条3項(a))
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質問事項は以下のとおりです。日頃はあまりこのような問題にあたることがありませんので、よろしくお願いします。

質問1 日本親会社の受入仕訳は次のとおりでよろしいでしょうか
現金預金 ####千/受取配当金####千
 ※ 法人税住民税###千
※法人税住民税####千円(法第41条適用予定)は、法人税69条の規程によ
り、中国子会社において実際に徴収され、納められる配当に対する源泉税です。
日中租税条約第10条第2項の規定によるものと思われます。最近までは中国外
資企業所得税法第19条第1項により、免除されていたものです。

(1) この免除規定はなくなったと思われますが確証はできておりません。また(2) 日中租税条約第23条第3項(a)(独資企業に対する20%の税率で源泉税が支払われたものとみなされる規程)は現在も生きておりますでしょうか。
生きているとした場合10%相当額については、タックススペアリングクレジットとして従来どおり、同条は有効と考えてさしつかえないものと思いますが、いかがでしょうか。この2点についても、教えてください。

質問2 配当は2006年度分及び2007年度分の、いわば2期分が親会社側の当年
度において受入が行われることになりますが、基通16-3-5及び基通16-3
-7に照らせば、2期分を当年度で外国税額控除の対象とすることについては、
問題なしと考えます。いかがでしょうか。

質問3 中国子会社は、中国において設立後10年未満の会社であり、企業所得税については現在二免中で、現在全額免除をうけております。これ(上記11)についてもタックススペアリングクレジットとして、外国税額控除の適用を受けます。
 法施行令142条3項によれば、この場合の国外所得は上記10の310,000千円となるものと思われます。が、この解釈でよろしいでしょうか。他の文献などを参考にしますと、違った解釈のものあるように見受けますので、お尋ねする次第です。

質問4 外国税額控除の対象となる外国税(控除対象法人税額)額は、次のように
なるものと思いますが、これでよろしいのでしょうか。
(1) 上記11の合計額  #####円
配当の源泉税額(みなし部分を含む) #####円
 合計 #####円
(2)法施行令142条の3
 #####千円(上記8の合計)×50%=####円>(1)
∴ 全額控除対象となる

質問5 控除限度額は次の計算でよろしいでしょうか。
(1)法人税額(法施行令142条1項 上記5)  #####円
(2)国外所得金額(法施行令142条3項 上記10)######円
イ #######×90%
ロ 国外使用人 0
∴######円
(3)その事業年度の所得金額(法施行令142条2項)#####円
控除限度額 (1)×(2)/(3)=#####円

質問6 配当にかかる外国税額控除の計算に必要な書類は以下のようなものでしょ
うか。
((株)中経出版 著者 マツイ中国グループ)参照
 (1)批准証書  (2)営業許可書  (3)監査報告付決算書 (4)企業所得税申告表及び付表のすべて  (5)完税証明  (6)董事会決議書 (7)配当金送金に関する銀行送金計算書
(8)レート表 (9)タックススペアクレジット(みなし外国税額控除)を受ける場合の事実確認根拠条文、租税資料の確認(日中租税条約・交換公文・外資企業所得税法・外資企業所得税法実施細則等)

質問7 その他注意すべき点があればご教示下さい。
質問8 なお、上記9で示しましたみなし税率33%は、2007年12月6日に公布された中国企業所得税法実施条例で25%となったようです。この税率は2008年からの実施になるものと考えますがこれでよろしいでしょうか。

某税務研究所からの回答

 某税務研研究所をご利用いただきありがとうございます。
ご質問について、次のとおり回答いたします。

 諸外国の税制や租税条約の締結等の動向の掌握は大変困難な面があり、先生のお立場もよく理解できます。当税研においても、会員先生方のご希望に沿うように、動向把握に努力していますが思うようにできない状況にあることもご了承ください。
 本件の日中租税条約及び中国の「企業所得税法」の改正の動向の情報源は、
JETROの通商弘報「企業所得税実施条例、08年1月1日から施行(中国)2007年12」等を参考にしていますので、これ以上の詳細は不明であることをご了承ください。

 以下、質問番号に沿って回答します。
(質問1) 仕訳は先生のご見解の通りと思われます。
なお、先生のご見解の通り、中国での配当に対する課税と租税条約の配当条項おいては、『中国に設けられた外資系現地法人からの配当は、原則として、20%の税率による源泉徴収がなされることになっています。この源泉税率20%は、日本の企業が受け取るには、日中租税条約によって10%に軽減される(条約第10条)ことになっています。一方、中国の「外商投資企業および外国企業所得税法」の第19条においては、この配当を外国に所在する企業が受け取る場合は、所得税を免除すると規定されていて、従来は日中租税条約に基づく10%より有利な免税が適用されていました。しかし、企業課税において内資企業と外資企業を区別しない新しい「中国企業所得税法」が2007年3月16日に公布され、2008年1月1日の施行日と同時に、「外商投資企業および外国企業所得税法」は廃止され、外国企業に向けた配当金の源泉課税の免税も廃止されましたので、それ以降は日中租税条約に基づく10%の軽減課税が行われます。』(JETORO 「貿易・投資相談Q&A」抜粋) また、みなし間接外国税額控除につきましても『(上記6.の)間接外国税額控除にあたり、中国での企業所得税負担について、実際の税負担額に加え、子会社が中国で租税優遇措置を受け、軽減、免除された税額相当分についても、これを子会社が納めたものとみなして、親会社の税額控除の対象とすることが条約に規定されています(第23条4項)。これを「みなし間接外国税額控除」と呼んでいますが、日中租税条約では、これの適用も認めています(第23条件2項&4項)。ただし、日中租税条約に係わる両国政府の交換公文の規定により、適用に期限があります。すなわち、同交換公文により2001年からは適用されないことになり、2001年中に開始する事業年度若しくは減免措置適用後10年目の事業年度のいずれか遅い事業年度までしか、みなし間接外国税額控除が適用されません。なお、上記の新しい「中国企業所得税法」の公布日である2007年3月16日以降に中国に設立された外資企業には、ハイテク企業や西部開発地区での設立などの例外を除き、企業所得税の優遇措置は原則として廃止されています。』(JETORO 「貿易・投資相談Q&A」抜粋) なお、これらの改正の具体的適用関係の詳細は不明です。

(質問2) 法人税基本通達16-3-5及び16-3-7の規定からは、先生が解釈されています2期分の一括計上はやや無理があると思われます。これらの取り扱いは、原則発生主義による計上の例外として設けられているものであり、本件ケースの2期分一括支払いが同通達の16-3-7の趣旨から「国外からの利子、配当、使用料について、長期にわたってその支払を受けることができないと認められる事情があるため、その送金が許可されるまで収益計上を見合わせることとしている場合(「法人税基本通達逐条解説 四訂版」 1,348頁参照 税務研究会出版局)に該当するか否かの事実認定の領域に属する判断が行われることになると思われます。

(質問3) ご質問の趣旨は、租税条約によるタックス・スペアリング・クレジットが適用される場合には、非課税国外所得であっても3分の2除外計算の適用があるか否かと推察されますが、これは、法人税法施行令第142条第5項カッコ書きの規定から、除外計算の適用はなく、そのまま国外所得金額の計算に含めることにされています。
(質問4)及び(質問5)これらは、基本的には、先生のご見解の通りと考えられ  ます。

(質問6) 外国税額控除の控除を受ける場合の書類の添付に関しましては、基本的には法人税施行規則第29条の3に規定されていますが、これらの書類以外に法人税基本通達16-3-58に掲げる書類等も提出・保存等を求められていますので、これらを参考にすることになると思われますが、具体的な詳細はよくわかりませんので、税務当局等に事前に確認されたほうが無難と考えられます。なお、先生ご指摘の文献に記載されているものであれば、おそらく、オーソライズされたものではないかと考えられます。

(質問7) 特にありません。

(質問8) この日中租税条約及び中国の「企業所得税法」の改正の動向の情報源であるJETROの通商弘報『5大経済特区と浦東新区の企業は1年ごとに税率引き上げ―「企業所得税法」の優遇策経過措置公表―(中国)2008年1月』によれば、これらの改正の適用時期に関して、次のような記載がされています。
『政府は企業所得税を優遇されていた企業に対する経過措置を明らかにした。例えば、15%の税率だった5大経済特区と浦東新区の企業などの所得税は08年に18%、09年は20%と年々引き上げられる。
「企業所得税法」(07年3月16日公布)では、内外企業の所得税は一律25%と定めているが、5大経済特区(注1)と浦東新区に設立された企業など、従来15%の低税率を享受してきた企業の過渡的な扱いがどうなるのか、注目されていた。07年12月26日付で公布された「国務院の企業所得税過渡的優遇政策実施に関する通知」国発007]39号により08年1月1日以降の5年間の経過措置が明らかになった。

同通知の要点は以下のとおり。
(1)従来15%の優遇税制を受けていた企業(5大経済特区と浦東新区の既設企業など、の所得税率は、毎年引き上げられ、12年には25%となる(表参照)。
(表の内容は 08年18%、09年20%、10年22%、11年24%、12年25%とされている。)

(2)従来24%の優遇税制を受けていた企業は、08年度から25%の税率が適用される。
(3 )従来「2免3減半」や「5免5減半」の優遇政策が適用されていた企業は、新税施行後も優遇が適用される。減免期間の開始されていない企業は08年度から期間の起算が開始される。
(4) 上述の経過措置を受けられる既設企業の基準としては07年3月16日以前に「工商登記」を終了していた企業として基準が明確になった。
(以下(5)及び(6)は省略)』

(法人税担当 ○山×雄)

税務署への質問内容とその回答の連絡

 いつもお世話になっております。ありがとうございます
さて、○○税務署1部門上席△△様から、電話にて下記のとおり回答を頂きました。これは4月14日に頂戴した回答に、質問5の4に関して疑義を申し出たところ、それを補足したところでの回答となるものです。
 これにより○○署への質問に対する回答は、すべて終了したことになります。よろしくご査収下さい。

質問1 この配当(2006年度、2007年度)に対し、中国側で課税される源泉税の率を教えて下さい。またその源泉税額は実際に徴収されるのでしょうか、あるいはみなし税額なのでしょうか。

回答 20%の税率で全額減免されています。すなわちみなし課税ということですから、実際に税額が徴収されることはありません。

質問2 中国子会社は2006年、2007年において、この2期とも現在「2免中」であり、企業所得税は免除されております。この免除されている税率は33%(国税30%+地方税3%)ということですが、これは正しいでしょうか。

回答 質問のとおり33%(国税30%+地方税3%)です。

質問3 日中租税条約、日中交換公文に基づき質問1の配当金源泉税、質問2のいわゆるみなし企業所得税のすべてについて外国税額控除の適用は受けることができますでしょうか。

回答 質問のとおり全額が外国税額控除の対象となります。

質問4 内国法人であれば、当期において過年度2期分の配当を、実施することは通常は不可能と思われます。中国では可能なのでしょうか。
 またこれが可能であるとした場合、この2期分の配当について2期分ともに日本親会社当事業年度で法人税法69条を適用することは許されるでしょうか。

回答 中国においては、このようなことは可能なようです。従って本邦においては2期分とも、外国税額控除の対象とすることに問題はありません。

質問5 質問にかかる外国税額控除を受けることができるとした場合、中国当局から入手しておかねばならない書類とはどのようなものでしょうか。

回答 1配当決議
 2申告書の写し
 3外商企業の申告A表
 4銀行への振込みが確認されるもの

※なお、この解答4につきましては、小職において疑義がありますので、再度△△様に検討をお願いしております。

4への回答(4月14日 午後4時頃)
 △△様から上記4に関して回答が参りました。「銀行への振込が確認されるもの」は不要です。「未収金」として今期での受入となります。
※直接タックススペアリングクレジット 基本通達 2-1-27
※間接タックススペアリングクレジット 基本通達16-3-5