研修19.6.7(木)

本日は終日研修、講師は名前を上げるのは差し控えますが、大阪が生んだ資産税の泰斗とでも申し上げておきます。
 税は「公平」「簡素」「中立」でなければならないと言われますが、実態はそうではありません。
 「公平」という文言は、一見正しいようですがそんなものは存在しません。
人は常に不平等です。それは容貌、家柄、才能、すべて違うことからも解ります。
税法だけが公平であるはずはありません。渡部昇一先生は所得税一律10%にすれば、公平で国庫も十分潤うということをおっしゃっていますが、国庫が十分潤うかどうかは別にして公平ということに関しては違うだろうと思います。
 それは、所得年1億円の人と、年100万円の人では同じ10%でも、当人にとってはまったく違った意味を持っているということです。
 標準的な生活費が一人年間で仮に200万円だとして、その質を想像すれば多言を要しないでしょう。
 仏法は差別平等を説きます。この世の差別は差別として、そのままで平等というわけです。浄土門であれば前世、今世、来世の3世で人生を捉えますから、この世の幸運も不運も前世の報いであり、もしこの世が不運であれば、来世が幸せとなるように精一杯努力しましょう。善根を積みましょう。ということになります。
 他方聖道門の方では、犬に生まれたらワンワンと啼いていればよい、蝉に生まれたらミイミイと鳴いていればよい、それだけの話だから、あくせくするな。というようなことを説きます。実にアッケラカンとしたものです。
 しかし、問題はそう簡単ではありません。「隣に蔵建ちゃ、わしゃ腹が立つ」、あるいは「世の中に楽しいことの数あれど、隣の貧乏これが一番」いうのが人の常です。
 人に嫉妬心がある以上、公平というのは実はないものねだりなのです。
 それに、所得税、法人税、消費税は共に1年を単位として課税されますが、そこでは課税標準が同じであれば、同じだけの担税力を有するのかというと、これまた違います。会社の歴史が一方は50年で、内部留保が十分にある会社と、一方は5年前に設立したばかりで、借金が多額にある会社では、法人税の課税標準が同じく5,000万円であるとすれば、同じだけの税金のかかる道理ですが、負担感はまるで違うということです。これに対して、どのようにすれば公平感生まれるかとといと、正しい解答はありません。
 従って税金を「公平」という言葉で語るのは、逆に飢餓感を煽ることになり危険なことなのです。
「簡素」ということもありえません。税制は社会構造を反映して作られますから、社会が複雑化すれば税制もそれに照応するように、複雑化します。
 本日の講義では、種類株式を税務がどう扱うかというのが一つのテーマーでしたが、これなどは商法が会社法に変わり、株式の発行形態が複雑になったことが背景にあります。
 株式も昔は、額面株式のみでしたが、それが無額面株式になり、あるいは自己株の取得が解禁され、今回の改正となっているわけです。
 資産税の泰斗でいらっしゃる本日の講師も、冗談ではありますが、リスクが高いので税理士を辞めたいと言ってたのが印象的でした。ここからどれだけ今の税制が複雑難解であるかを推察して頂きたいと思います。
 また「中立」ということもどういう意味があるのかよく判りません。一般的に考えれば「中立」というのは自分に火の粉が降りかからない限り他にチョッカイを出さない、ということですから、税制も特定の企業のみをひいきにして、他の企業から文句がくるようなものであってはいけない、ということかなとも思いますが、それなら「公平」という言葉のみでもよいハズです。
 敢えてこの「中立」の例らしきものを挙げるなら、法人税に置ける退職給与引当金が該当するかも知れません。この退職給与引当金はもう無くなりましたが、歴史の古い会社で古参の社員が多くいるような企業では、当然厚く積まねばなりませんでしたし、パートばかりの会社では不必要でした。
すなわち、見ようによっては、退職給与引当金制度は古参社員のいる会社のみを優遇しているようなところがあったということです。
先日ある会で、ある方が日本から物を輸出したときに、消費税が還付されるのはけしからんということをおっしゃっていました。
 まあここでは書きませんが、これにはこれの課税の理屈があるわけで、一概に輸出免税が悪いとはいえません。しかし日本の消費税は帳簿方式であって、インボイス方式ではありませんから、この点から消費税を考察していけば、確かに輸出免税はけしからんという理屈も成り立つかもしれません。しかしこの問題に立ち入ると、文章が終わりそうにありませんので、割愛いたします。
 いずれにしろ、税制は社会構造を反映して、常にその構造に妥協しながら作られるものであり、課税理論はあとからの屁理屈であると達観しておきます。
 従って「公平」「簡素」「中立」は空しい絵空事です。税金というのは国民の側に国に対しての義務感と忠誠心があってのみ正しく納められるものなのです。
教訓・・・理屈と膏薬はどこにでもくっつく・・・万古不易なる真実です。
でも、皆さん税金はきちんと納めましょうネ。こういうのを清濁を併せ呑んだ大人の知恵というのですヨ。