保険業界受難の時代

国税庁の通告で、逓増定期の生命保険が販売見合わせになった。生命保険であるから死亡時の補償は勿論あるが、この保険の特徴は、その補償よりも掛金の取扱いに妙味があった。
つまり、支払った保険料は企業側で全額損金参入(経費扱い)ができ、しかも数年後には、その掛けた金額の殆どが企業にバックされる仕組みのものである。
 例えばある外資系生保が扱っている逓増型保険などは、掛け始めて5年後には、その掛金の92.7%の返戻が最初から保証されている。これは被保険者の年齢にもよるのであるが、節税を計りたい企業にとっては都合の良い保険であり、保険会社やその代理店にとっては、大きな利益の源泉でもあったのだろう。
 ある地方の保険代理店などは、これに悪乗りをして、中途で契約者を法人から個人に変更することで節税ができるとの指導までしていた。その手法のパンフレットを知人の保険代理店から、見せてもらったことがある。不思議に思ったその知人は、私にその正否の意見を求めてきたのである。
 法人税通達が、その経費処理を認めているのであるから、中途で契約者を変更してもその時々の返戻金を正しく個人と法人の側で処理している限り脱税にはならないかも知れないが、限りなくクロに近い手法であり、問題は残ると回答したのを覚えている。
 生命保険の本来の使命は、本人が死亡したときに周りの人たちへのリスクを回避のためにある。節税型の保険はそれ自体がその使命を逸脱していると思う。
 またそのような保険を競って開発し、売らねばならない保険会社やその代理店は大変な立場に置かれているのであろう。折りしも保険金不払いの問題が表面化して生命保険業界に大きなショックを与えた矢先のことでもある。保険業界は外資系を含めて大変な過当競争の時代に突入したのである。保険料のデスカウントも始まっている。
日本人の貯蓄率は下がり、生活に余裕が無い時代が始まっている。そうした面からも生保への加入は今後減ることはあっても増えることはないだろう。
加えて逓増型の定期保険での節税ができないとなると、企業の側も保険加入は控えるであろう。しかし国民の側からすれば生命保険は現在のリスキーな社会を生き抜く上で、欠かせないものでもある。
このような問題は実は生命保険業界だけでなく、損害保険業界にも起きてきている。損保の場合も、詳細は割愛するが補償の中味の問題や保険料の問題をきめ細かく検討する時期にきたように思う。リスク回避と経費削減のこの二つの視点から、今後は関与先の生保と損保をより細かくチェツクさせて頂こうと思う。