36コストをどう考えるか(5)


 4回ほどは、コストを考える上での基本的な背景というようなことについて書いてきました。

最後にこのコストを考え、財務分析をする上でのやや専門的ではありますが、日常的によく使われている指標の問題点などについて、その

いくつかを取り上げ書いてみます。
先にも紹介しましたが、TKC経営指標を観察していて思うことは、どのような業種の中小企業も概ね20名前後の従業者数に止まる、ということです。

 要因は色々あるのでしょうが、一つは経営者が一人で会社を切盛りする場合、目の届く範囲内が20名、と云うことではないかと思います。

 大まかな話ですが、今、中小企業であっても、15名以上の社員を抱える企業は概ね経営が順調であり、また、従業員規模2~3名のところは、業績が伴わないように思います。そのようなところ、税理士は企業の会計を強くして会計の面から、企業の普遍性や安全性を構築するような指導することは大事だと思うのです。

 労働分配率は、限界利益に対して計算されますが、これは面白い指標で、業種業態を問わず、50%以下であれば概ね経営は良好と言えます。

 70%を超えてくれば危機ラインとなります。月商と借入金の倍率においても商社と加工業とでは、趣が違います。

 運転資金場合、その借入金額は商社であれば月商の3月から4月分が限界であるが、加工業であれば月商の2年分ぐらいはあっても、殆ど経営に危機が見えないこともあるのです。

 テキストに書かれているように必ずしも月商の3月から4月は運転資金借入の限界とはならないのです。また日常の会計処理において、製造経費と販売費一般管理費はそれほど厳密なものではありません。

 また会計の煩雑さを考えたとき、これを厳密に分けることは至難です。ここが曖昧であると粗利益率などは意味が無いものです。むしろ営業利益率の方が大切です。

 また運転資金の量を見る場合、流動比率は必ずしもあてにはなりません。むしろ手持ちの受取手形、売掛金の合計と、支払手形、買掛金及、短期未払金及び短期借入金の合計額(場合によっては短期借入金を除外して)を比較して、運転資金の余裕度を見る、つまり現在の回収予定額と支払予定額の差額を観察すれば、少なくとも現在の借入金が運転資金の不足から生じたものか、長期投資に回ったものかの判断は付き易いのです。