不況脱出大作戦 ~(6)適正利潤

今、日本経済の不幸の一つは、大手資本が小売を牛耳っていることです。消費者に良いものを安く提供することが、小売業の使命である、とう認識は間違いです。そこにはバランスがありません。
人は消費者としての一面を持っていることは確かですが、同時に生産者・供給者としての一面もあります。良いものを安くということであれば、供給業者を叩くしかありません。それは、流通業者を排除し、製造業に利益をもたらさず、海外で生産に拍車を掛け、輸入という道を取らざるを得なくして、労働者の所得を下げることにつながります。
メーカーが創意工夫し精魂込めて作った物を安く買い叩いて、安く売る、ということは、大手小売業の倣岸です。若い人の年間所得は、適齢期を迎えて、結婚もできないほど、低く抑えられています。
そのうち大手小売業も、いずれ物が売れなくなって、自らの事業も危機的な状態に陥らざるを得ないでしょう。また今、小資本のスーパーなどが、立ち行かなくなり、M&Aで多く売りに出されているようです。
大手小売業が、生産者に配慮し、共存の道を選べば、物価は上がるかもしれませんが、豊かな日本が出来上がることになるでしょう。しかし昨今の資本の論理というの、そんなものではないのです。適正利潤というのは、自らが適正売ることは、勿論ですが、それだけでは、単なる亡者です。
同業者や取引関係者の適性利潤にも配慮しなければなりません。資本の論理ではなく、資本家の矜持が試されているのです。資本家にはノーブレスオブリージュ、誠の道が期待されます。大手資本家に同時代を生きる他者への、優しい眼差しが期待できないのであれば、小売業の資本規制をやらざるを得ません。 
最近まで、街には個人事業者としての雑貨屋やパン屋それの酒屋があり、またそこに納入する業者があり、それで、皆が潤っていたのです。