不況脱出大作戦 ~(3)連合艦隊解散の辞
人も企業も栄華の絶頂にあって、その後の敗因を宿すものです。明治38年12月21日、連合艦隊司令長官であった東郷平八郎は、日露戦争の終結をみて連合艦隊を解散するにあたり、海軍軍人に訓示を垂れました。
その最後の部分を抜粋しますと「神明は、ただ平素の鍛錬に力め、戦わずして既に勝てる者に勝利の栄冠を授くると同時に、一勝に満足して治安に安んずる者より、直ちにこれを奪ふ。古人曰く、勝って兜の緒を締めよ・・・と」。
当時の日本は日本海に世界最強と言われたロシア艦隊を屠り、ついに世界の一等国入りを果たしました。この辺りが戦前においては日本の輝かしい時代でした。
その後、昭和16年にアメリカと戦端を開き、昭和20年には、完膚なきまでにうちのめされ、敗れ去ったのです。連合艦隊解散の辞は、日露戦争で勝ち過ぎたことへの戒めとして、発せられたのですが、日米戦争を経て、東郷平八郎が杞憂したとおりの結果を迎えました。その後の日本はどうでしょうか。
国力を経済に求め、暫くは快進撃が続いたものの、アメリカとの経済戦争にもまた破れたのです。戦争に負けたことで、武への信任と自信を失い、経済力が落ちたことで、鬱(うつ)の状態に入ってしまっています。
ここから立ち直るには、もう一度自らの持ち駒(強みと弱み)を検討し、日本の歴史を確認して、再出発しなければなりません。企業も同じで、悪化した業績を立て直すには、他に敗因を求めず、自らを俎上に載せ、それこそ他人の心を覗くよう目線で、観察して、かつ再び情熱を沸かさねばなりません。
自らのDNAを深く探るのです。企業の再生というと、銀行交渉をして債務なカットをしてもらい、あるいは会社分割をして、再出発をするようなことも手法としては、あるわけですが、それは再生の本質ではありません。