機軸

 (1)税務・・・・会計なくして税務なし
 (2)会計・・・・業績なくして会計なし
 (3)業績・・・・経営なくして業績なし
 (4)経営・・・・社長なくして経営なし
 (5)社長・・・・経営力なくして社長なし
税理士事務所の本質は、関与先の会計業務と税務業務の受託にあるが、その要素を上記のように関連付けてみると、結局経営者の経営力が弱ければ、顧問料が下がって、税務や会計の受注はないことになる。
税務や会計といっても、税理士事務所がクライアントから独立した立場に立とうと思えば、会計帳簿の作成を受託(下請け)することが本質業務ではない。
会計事務所が領収書や請求書を預って、伝票を起し記帳をすることは論理的に矛盾がある。日常の取引に関して事実の確証ができない。
眼耳鼻舌身意(六感)と原始証憑書類の合致がなければ、出来上がった会計帳簿は偽物である。税理士はその確からしさを、検証するのみ。
理想としての税理士業務は、クライアント企業の財務諸表と税務に関して、利害関係者(債権者及び国家)に保証を与えることである。しかしそうした理想の仕事をさせてくれる関与先というのは、そう多くはない。
企業の赤字率は現在、実に73%の高きに達している。これは中小企業経営者の経営動機として、正確な会計帳簿の作成や税務への無関心を誘うには十分な根拠となるものである。
中小企業というのはもともと情報力や開発力が弱い、ということに加えて、本来なら専門分野であるはずの、加工力や技術力においても、随分とお粗末な状態に堕してしまっていて、得意先の期待には応えきれていない状況がある。
また私のお客にも、大手メーカーの下請けが数社ある。最近になってそれらメーカーは、従来のように仕事を流すのではなく、下請け同士を価格で競争させるような姑息な手段を採り出した。そのような傾向が認められるものの、他方においては、技術力の高い優秀な下請けを求めているような側面もまた見られるのである。
と言っても、私が勝れて経営力があるなどというつもりは毛頭ない。実は私自身も同工異曲なのである。 
私の事務所のクライアントはリーマンショックまでは、黒字率が70%を超えていた。ところが今やこれが逆転している。
今、私が考えていることというのは、先に書いたとおり、私の業務(税務と会計)をスムースに遂行するためには、結局社長の立場に立って社長を補佐するということに尽きる。このことは前から理解をしていたつもりではあったが、大変なのである。
大変というのは、よく言われるように「馬を水飲み場に連れていくことはできても、水を飲ますことまでは出来ない」ということだ。ここのところは、ハッキリ言って不安である。偉そうな書き方をしたが、私が偉ぶるというようなことではなく、他者が会計的眼で観察すれば、すぐに気が付くようなことが、経営当事者からの共感は得られないということである。
それは私との、問題の捉え方が違うということでもあるのだろう。
私の武器の一つはやはりそのクライアントの貸借対照表であり損益計算書(以下「財務諸表」という)である。財務諸表というのは、その会社の結果を表すものであり、企業を観察し理解する上でこれほど勝れたものはない。

しかしクライアントの経営状態を財務諸表から観察したとき、問題点は理解しえてもその原因が分かるということにはならない。しかし原因が分からなければ正しようがない。
これまでもクライアントには月次財務諸表は勿論、同業他社の経営数値も提供してきたし、その問題点の指摘もしてきた。しかし、その先にある原因究明とその是正は、クライアントに任せてきていたのだ。今後はこれを私の業務として取り組むということである。
つまり、経営者に改善点を示し、一灯(希望)を点じてやる気を起こさせるということだ。 
例えば、同種同規模の会社と比較して、材料費と外注費の比率が高いような場合は、その
会社の人件費と人数を確認することになる。同時に固定資産の装備率も観察しなければな
らない。そうして、ヒアリングをすれば、営業が弱かったり、社員の年齢構成が歪であっ
たり、社員同士の横の連携が悪かったりということはよくある。
勿論私1人で出来るわけがない。会社の関係者全員の知恵を借りることになるだろう。
それには多面的な観察(正見)から入り、観察結果から何が不足か、どこをどうすべきかを考え(正思惟)、それを言葉(正語)にして知らしめる。そうすれば誰が何をやるべきか(正業)が分かることになる。
各担当者には自分の責務(正命)を果たしてもらう。当初は試行錯誤もするだろうが、そのうちに各人の念(正念)が定まって、各個の協力を得て経営は安定(正定)する。これは仏法でいう八正道の置き換えである。
正見に始まって正思惟から正語にまで至れば、企業経営の80%は先が明るくなるだろう。
これをもう少し別の角度で書くと
(1)財務諸表や同業他社比較から、問題点を抽出しこれをクライアントに経営の状況の理解を得る。
(2)但し、(1)の資料からはその企業の常態は把握できても、原因までは分からないので、会社の内部に入って原因究明をやり、人的側面での年齢構成やそのスキルを検討する。
 (これまで(1)のデーターの提供はしてきたがこの分野での仕事は、税理士としてこなかった)
(4)同時に業務プロセスを見直すように、指示を出す。経営の弱い会社の特長として、経営者の経営力の弱さや不熱心さが挙げられると思う。それは、能力の問題というよりも、何らかの理由で、会社に居る時間が少なかったりするのである。そのような会社では経営者の補佐を置くことも必要となるだろう。
(5)改善点は、何時までに改善するか、そのメルクマールを何におくか、を示して、改善内容は点数化しあるいは目標化して、これは私がチエックする。
その改善も計画を立てた段階では、単なる仮説であるから、仮説を実行に移して問題があれば計画の見直しを行う。行動をあまり難しく考えないで、気軽に行うように助言をする。
ただ問題はある。昨年9月からお引き受けをしたある会社のこと、財務諸表が正確でない。すなわち記帳がおろそかになっているのだ。人的構成から見てその能力があるはずなのにできない。また、最近施工し引渡の完了した工事について1件だけも、その工事に関連した収入と費用の当初予算と実績の対比表を作ってくれ、とお願いしたのであるが、これもできない。すなわち一つの工事で利益が出たのか、赤字となったのかを、収入金額とその材料費、外注費や人工賃、その他の経費について予算と実績を見て、どこを改善すべきかを、示したいと思うのだが、今のところその協力が得られていない。
改革は社内の現有勢力だけでは駄目なものである。なぜなら経営を悪くしたのは現有勢力なのだ。そのような企業においては、外部の人間を入れることも考えねばならない。否、外部からの刺激こそ必要なのだ。