事業を仕舞うについて
今は大変な時代である。平和とは戦争と戦争の間にある束の間の休息時間であるらしい。戦後は、比較的経済環境にも恵まれ、安泰でもあったわけだから、現状は寧ろ人間社会を考える上では常態かも知れない。
事業の継続について悩んでいらっしゃる方も多いと思うので、敢えてこの文書を書き、判断の一助とされることを願うものである。
事業を仕舞う上で、その前提となるのはよそ次のようなことだろう。
(1)借金の完済が今後20年以上かかる見通しである。
(2)営んでいる事業が衰退型であり、今後回復する見通しが立たない
(2)成人病等による体力的な不安
(4)70歳を越えているのに後継者がいない
私の周りには、この4項目のいずれにも該当しないにもかかわらず、廃業を考えていらっしゃる方もある。やはり時代に感化されてしまったということだろう。昔、天が落ちてくるのではないかと悩んで、それで自殺を考えた人もいるらしい。これが杞憂の語源である。
この4項目に該当しないような場合は、多少の苦しさはあっても経営を楽しむ余裕を持ってもらいたいものである。
そこで上記4項目に該当する場合、どのようにすればあまり社会に迷惑を掛けず、かつ生活を残して廃業ができるかということだ。
廃業というのは、簡単なようで、創業よりも難しい面があると思う。
まずその大きな理由として、未練がましくなるということだ。
人というのは、執着からくる未練というのは絶ちがたいものがあるものだ。
それが長い歴史などある場合はなお更である。
また世間体もある。それに、借金まみれであったとしても、廃業をすれば、たちまちその返済の問題が出てくるが、ダラダラとでも営業を続ければ、それなりに生活ができるような場合というのは、やはり廃業は難しい。
事業の継続か、廃業かで悩んでいらっしゃる方は、一度誰かに相談をすべきである。
少し前のことであるが、ある社長から廃業の時だと見極めたら、その旨のアドバイスをして欲しい、と言われていたことがある。
私はその申し出に従って、その社長にそろそろ事業の引きどきですよ、と告げたところ、本当に即座に廃業を決意して、事業をお止めになられた。
結果は上々。自分で言うのもきが引けるが、そのアドバイスは的確であったと、今は思うのである。
傍目八目は世の倣い。自分のことは自分よりも他人がよく理解をしていることが多いのだ。仕舞うについても、従業員への配慮、得意先への案内、設備機械の廃棄や譲渡など、事業の継続とは違う難しさがある。
私がアドバイスを差し上げた社長に最近お会いしたところ、廃業のアドバイザーならできるかもしれない、と冗談を言っていらっしゃった。
もし事業の手仕舞いを考えていて、悩んでいらっしゃるなら、一度私にも声を掛けてもらいたいものである。現状を調査しそれなりの助言は差し上げられる、と思う。