就業規則

過去において、労働争議が猖獗を極めた時期がありました。今は労使協調の時代です。というより、双方が知恵と汗を出し合わなければ、企業も生き残れませんし、そこに勤める人にもまた将来がなくなるといった方がよいのかも知れません。
 企業を観察していて思うことは、得意先との接点、製品へのきめ細かい対応など、それこそ労使が指揮者とオーケストラの関係のごとく一体化し、完璧に補完しあう関係が望まれています。
 つまり「経営品質」が問われていりのです。経営品質を問う上で最初に考えなければならないのは「物」でも「金」でもなく、まず「人」でなければなりません。
そこでは人を使うということは、どういうことなのかを徹底的に考えることが必要になります。企業経営者の悩みで最大のものは人の問題です。人の質が企業の将来を決定づけてしまいます。
 ところが、その労使を結びつける就業規則については、おざなりになっているように思います。とにかくあればいいという感覚でしか捉えてないということです。作成は他人任せにして、これには目をくれたことがない、という経営者は結構いらっしゃいます。
 1人でも雇用すれば、就業規則はあるに越したことはありません。とういより、これがないと人が使えません。
 就業規則がなくとも、気配りをしながら働くのは50歳以上の社員ではないでしょうか。すべてとは言いませんが、今の若い人は就業規則がしっかりしていないと使えません。根本的なところで、人間関係への理解ができていないため、阿吽の呼吸や配慮の仕方が判らないように思います。
 従って、就業規則には権利義務の関係だけを謳うのではなく、企業目的や経営者が社員に何を期待しているのか、ということなどの服務規律等もさりげなく書いておくことが大事であろうと考えます。
 そもそも人の雇用とはどういうことなのか。これに関して消費税法は面白い見解を持っています。雇用形態を外注と比較して
1その契約に係る役務の提供の内容が他人の代 替を容れるかどうか
2その役務の提供に当り事業者の指揮監督を受 けるかどうか
3まだ引渡しを了していない完成品が不可抗力 のため滅失した場合においても、その個人が 権利として既に提供をした役務に係る報酬を 請求することができるかどうか
4その役務の提供に係る材料や用具等を提供さ れているかどうか
といったようなことを、総合的に勘案して判断をするというのです。

 判りやすく書きますと、例えば会社内でOA機器の配線をするとします。これを内部でやるとすれば、社員が関わります。上司の指示を仰ぎつつ、用品は自前で調達し、作業を進めるということになります。では配線ミスをすればどうかというと、その責任を他に転嫁することはできません。
 勿論作業に携わった社員は叱責を受けるにしても、そのミスに伴う代金は社員に請求しないのが普通です。ミスを問わない。悪意がない限りそれに伴う給料の減額も通常はありません。これが人を雇うことの条件です。 
 外注に出せばどうか。受けた先は見積書を提出し、それに基づいて、配線作業をします。ミスがでればその負担は当然です。納期が要求され、その納期までに完成品を提出しなければこれまたペナルティの対象となります。
 社員であれば多少は決った日までに作業が終わらずとも、ペナルティを負うことはありません。
 人を雇うというのは、その人の時間を買う代わりに待遇を保証することであるということです。給料は時間に対する対価です。雇用される側にしても、就職というのは力では抗いませんと最初から従順忠誠を誓うことでもあります。

 就業規則は、経営陣の力をセーブすることで、社員の畏怖心を取り、その代わり、経営への最大限の協力を取り付け、社員の力を100%引き出して、双方が同一方向を目指すことができる礎としなければなりません。
ここにしっかりした就業規則を作り、労使双方が雇用の意義を正しく理解しなければならない理由があります。

 就業規則は社員の権利の保証をします。しかし就業規則で保証される社員の権利は、今日的課題としては当然の義務に過ぎません。むしろ雇用とは何なのかということについて労使双方の意識を覚醒させる効果を持たせることが大切なのではないでしょうか。
 社員の義務を明確化して賞罰も謳います。ここが明らかにしないと、叱れないし、褒められないのです。勿論その賞罰については経営陣がしっかりとフォローして、実行しなければなりません。
 就業規則では、その冒頭に会社の存在理由・理念を謳います。内容にも曖昧な表現は避けるべきです。しかし冒頭に企業理念がある就業規則は少ないと思います。

 どこの会社でも就業規則に経営者の魂が籠もったものにはなっていないのが普通です。あればよし、無くても更々構わないというのが一般経営者の感覚ではないでしょうか。解雇をした後のトラブルが多いのも事実です。就業規則の服務規律も曖昧で、訴えられてアタフタする状況も散見されるところです。
 では就業規則の見直しをする場合、あるいは新たに作成する場合、どのような手順を踏むべきでしょうか。
 まず社員の思いを聞くべきです。これを実施しますと結構いろいろな意見が出て参ります。ヒアリングには社長が直々に当るより、むしろ外部の中小企業診断士あたりに4~5日をかけてやってもらうのがよいのではないかと思います。社長では本音が出ないでしょうし、幹部社員が代理をしても同じことです。
 それに幹部社員に任せた場合、幹部社員にとって都合の悪い本音はトップに上って参りません。また従業員の側からしても、社長直々や幹部社員では言い辛いこともあるものと思慮します。これを外部に任せる場合でも、若い人より人生経験豊かな人が良いに決っています。
 これを実施しますと経営上有益な、しかも意外な意見が出てきます。

 私が就業規則の見直しをいうもう一つの大きな理由は、製造業においては
パート従業員の扱いを深く考える時代がきたな、と思うからです。今後ますます企業の収益状況は悪化していくものと考えております。パートの戦力化を考えることなしに、企業経営はなりたたないのではないでしょうか。
 パートを戦力化して、これを企業労働の中核に据えなければなりません。
そのために、パートの就業規則の整備が必要となります。また派遣に頼るのは
労働法規の改正もあって難しくなりました。
今業績がよい会社の一つの特徴は人件費を安く 抑えているということです。
これからは、女子よりも男子の失業が顕在化すると思います。男の比較的高齢者が、スーパーなどでレジの前に立っている昨今です。
若年者の失業も然ることながら私は40歳代後半から60歳代の男が溢れて
くるような状況にあるのではないかと推測しております。
 そこで、パートを組織化して社会保険にも加入させ、利益が出れば賞与も出
してもいいと思います。残業を命じても、深夜勤務であっても元が安いのです
から、それほど堪えるものでもありません。
 正規の社員さんは会社の支柱を担い、またパートのでは処理できない現業の
補助をしてもらうようにすれば、賃金も相対的に下がります。
 このパート従業員の就業規則もお疎かにはできないのです。製造業の形態に
もよりますが、現場の作業はパート従業員を主体にして、正社員との役割分担
を図らねばなりません。
 また就業規則も従業員10人未満の会社であれば、その社員の癖や成長を念
頭において、作るべきですし、30人を超えるような会社の場合には、部門ご
とに、その部門の目的に合わせて作成するなどの工夫があって然るべきかと思
います。