風が吹けば

「風が吹けば桶屋が儲かる」というのはどういう意味かご存知でしょうか。
ときは江戸、とても風がよく吹く街がありました。砂塵が舞います。砂塵が舞えばそれが人の目に入って、目を患う人が増加します。
当時のことですから気の効いた眼科医がありません。盲人が増加します。
盲人は社会的にハンディを負っています。社会福祉もない時代ですから、生計を立てるため音曲を習うことになります。すなわち三味線を習うというわけです。ご承知のとおり三味線の弦には猫の皮を使用します。盲人が増えれば三味線を習う人も増加します。
 猫をたくさん捕獲しなければなりません。猫が街中から居なくなります。猫が居なくなった結果、鼠が繁殖を始めます。鼠は木をかじります。
 私の子供の頃は、カリカリと鼠がよく家の柱や壁をかじっていたものでした。木をかじることで、歯の調整をするのだそうです。江戸時代のこと、プラスチックの桶はありません。桶はすべて木で作っておりました。鼠は桶もかじります。鼠が増えて桶をかじりだせば、家中の桶が傷みだし、使い物にならなくなります。当然桶屋さんが繁盛します。
 というのが「風が吹けば桶屋が儲かる」のいわれです。因果の理はよく判らないが、相互に何らかの関係がある場合の喩えとしてよく使われます。

さて、前置きが長くなりました。では、「消費者ローンの貸し出し縮小が、地方の景気を悪くしている」といえばどうでしょうか。すなわち風が吹けば桶屋が儲かるという喩えの現在版ということです。

 話がややこしいので箇条書きにいたします。
1 某消費者ローンの会長が盗聴容疑で逮捕されたのが2003年12月。またここに至るまでの経過として、消費者ローンのアコギな融資や取立てがマスコミを賑わしていました。
2 グレーゾーン金利の過払い返還請求を任意弁済にも認めた最高裁判決(2006年1月)がきっかけとなって、2006年12月、貸金業法が改正されました。
※「過払い金」とは、消費者金融の借り手が上限金利(15~20%)を上回って支払ってきた利息超過(いわゆるグレーゾーン金利のことで20~29%の率による違法金利)のことです。
3 この法律は、その後のグレーゾーン金利を禁止するだけでなく、もし借り手からの請求があれば、過去に過払いしていた利息分についても、返還しなければならないとしました。
4 過払い金回収をうたい文句にして、弁護士や司法書士でこれを業とする人が出てきました。その結果大手消費者金融会社でも欠損会社続出し、今日、中小金融会社は事業からの身売りや撤退を余儀なくされています。
5 金融機関各行は消費者金融の経営が危なくなってきたのをみて、消費者金融には金を貸さなくなってきました。
6 その結果、消費者金融には借り手に融資する金が調達できなくなってきました。
7 消費者金融から金を借りている人は、もともと所得の低い人であるから、遊ぶ金なくなって、パチンコにいけなくなりました。
8 以上のようなことから、パチンコ業界は未曾有の不況を迎えています。
9 パチンコに限らず競輪、競馬、競艇なども同じ理由で軒並み売上を落としてきています。
10 競馬、競艇、オートレースなどは地方自治体の大きな収入源であつたのが、入場人員と売上の減少のため、自治体の経営が逼迫してきています。

 上記は諸君4月号「日本版サブプライム問題の炸裂で地方は2度と
立ち直れなくなる」 (水谷泰忠様)の論文より抜粋させて頂きま
した。詳しくは、諸君4月号をお読み下さい。読み応えのあるとて
も面白い(これで苦しんでいる人には申し訳ありませんが)内容でし
た。

 これは目に見える悪を断ち切った結果、目に見えない秩序を破壊したという話です。
 しかしまあ、この判決を出した裁判官諸氏は、子供のころから真面目に勉強して、実社会を知らないままの人たちだったのでしょうね。
素人考えですが、裁判上の判断としては上限金利を段階的に下げ、過去には類が及ばないようにするとともに、悪辣な取立てへのペナルティを厳しくするように法律改正を慫慂すればよかったのではないでしょうか。
最高裁の判決は常に社会的規範性を持ちます。また最近の傾向として、このような社会的ルールを変更する場合、それが急激であったり、あるいは過去にも類を及ぼすような変更が目立ちます。これでは秩序の安寧は保てません。
 マスコミはこの判決に先立ち、消費者ローンの悪い一面だけをみて、消費者ローンが諸悪の根源であるかのような叩き方をしました。マスコミはいつも片面居士です。
 昔から阿漕な金貸しは存在しました。しかしそれは必要悪であろうと思います。
子供の頃、金貸しが貧乏人から、布団を巻き上げて持ち去るというストーリーの芝居を見たことがありました。そこで貧乏をしてはいけない、ということと、この世は悪辣な人種がいるということを学んだのです。
こうした高利貸しは他山の石として、軽蔑をされることで反面教師としての役割を担っていました。社会的弱者というのは、場合によっては悪であります。あるいは弱者を装った悪も存在します。弱者は常に保護されるべしというのは、戦後日本の大きな間違いというべきです。
 しかしそれは戦後の一貫した風潮であり、最近はそれにますます拍車がかかってきているように思います。消費税を上げて、年金をカバーするという発想など、とても感心できるものではありません。そこには自助や自主独立の精神、公の認識のカケラも認められないからです。このような年金は生活保護の発想と選ぶところがありません。
 とまれ、これは経営にも通じることですが、組織改革は本来慎重であるべきです。慎重というのは、改革をするなということではなく、その改革が組織に与える影響や利害得失を微細に検討しなければならないということです。
 しかし一旦決断したら、それは疾風のごとくでなければなりません。
話は少し脱線したようです。テーマがなんせ「風が吹いて桶屋が儲かる」ということですから、お許し下さい。