ソニーサプライヤー行動規範に観る中小企業の経営指針19.8.14(火)

ソニーはソニーグループのエレクトロニクス事業分野において、サプライヤーが、効率的かつ効果的に、自らの社会および環境に対する責任を果たし、かつ、サプライヤーに対するソニーグループが満足する要件として、事業活動を行う各国・地域のあらゆる適用法令、規則を遵守し、誠実かつ倫理的であることを期待して「ソニーサプライヤー行動規範」を遵守することを求めています。 
 単に各国の法令、規則の遵守を求めているのみならず、誠実かつ倫理的となっているところからして、各国の習慣・風俗までも視野に入れた企業道徳の構築を要請したものでしょう。
これは電機業界行動規範Electronic Industry Code of Conduct(EICC)を受けて策定されたとのことですから、ソニーのみならず大手企業の殆どがサプライヤーに求める行動規準と考えて差支えありません。
従って、この行動規範には中小企業がこれから生き延び、繁栄するためのヒントが綴られていると思います。
1労働に関するもの
 (1)労働の自主性
労働者の意思に反した労働の強制、借金を担保にした労働の強制、囚人的労働等の禁止
 (2)15才未満の児童労働の禁止
 (3)ハラスメント、人種、民族、宗教、障害、配偶者の有無等による差別待遇の禁止
 (4)性的嫌がらせ、虐待、身体的懲罰、精神的・身体的強要、暴言等の禁止
 (5)最低賃金の支払
 (6)労働時間の法的遵守と、1週間に最低1日の休日を与えること
 (7)結社、抗議行動、労働者評議会の権利の尊重
2安全衛生に基準
 (1)機械装置の安全対策
 (2)生物・化学物質等に対する管理と適切な保護用品の提供
 (3)職場の安全環境の予防措置、安全対策の設計や技術管理
 (4)緊急災害対応 
 (5)労働災害、職場的疾病に対する対応
 (6)重労働の状況調査と管理
 (7)清潔なトイレ設備、飲料水、清潔に準備された食事・寮設備の提供
3環境基準
 (1)製品含有物質規制およびそれに関する全ての法規制の遵守
 (2)科学物質と環境汚染物質を安全に取扱うための管理
 (3)製品の製造や排水処理の過程で発生する排水や廃棄物の管理
 (4)業務上発生する揮発性有機化合物等の適切な監視・管理
 (5)必要とされる環境上の許可書と登録等
 (6)汚染防止策や省資源化
4管理の仕組み
サプライヤーは、当規範に関連する管理の仕組みを採用、構築し、事業や製品に関連する法令、規制、顧客要求を遵守し、当規範への適合。運営上のリスクの明確化と低減および継続的改善を図らねばならない。
 (1)企業の社会と環境への責任を確認し、規範の遵守と継続的な改善を実施することの宣言
 (2)経営管理の説明責任と定期的なレビューを保障する会社の責任者の明確化
 (3)関連法規、顧客要求事項の特定のモニターとその理解
 (4)サプライヤーの事業活動に関わる環境、安全衛生、労働慣行でのリスクの特定プロセス、その影響度合いの把握、特定したリスクの統制
 (5)明文化された基準、活動目標、目標値、実行計画と目的に対する定期的な評価の実施
 (6)サプライヤーの方針、手順および改善目標を実施するための社内での教育、研修
 (7)サプライヤーの実績や施策、利害関係者への期待を明確に、正確にコミニュケートするプロセス
 (8)当規範に対する従業員活動の評価とその理解およびその活動の改善につながる継続的なプロセス
 (9)法規の遵守、当規範や顧客要求、社会・環境に適合するための定期的な自己評価
 (10)内部や外部評価、調査などにより不十分な活動の適時改善プロセス
 (11)法令遵守と要求事項への適合状況の文書化と記録
5倫理的経営
 (1)高潔な最高の基準を全てのビジネスの求め、汚職、恐喝、横領を禁止し、契約の解除、必要な法的措置をとること
 (2)事業活動、構造、財政状態や業績に関わる情報開示は関連する法令と業界の実例に従うこと
 (3)賄賂など不適切な利益を目的とした贈答接待の禁止
 (4)公正な事業、公告、競争の基準を設け、顧客情報の安全措置が取られること
 (5)取引先や従業員の通報案件に関して秘密が守られるプログラムの整備
 (6)社会と経済の発展の一助となる地域貢献活動の奨励
 (7)知的財産の保護

※下線は、当事務所の守備範囲としてのクライアントに負うべき使命

 上記課題に対する倉矢税理士事務所からのアプローチ
 さて、テーマは上記に書き出したソニーサプライヤーの行動規範をどのように読めばよいのでしょうか。つまり、これを積極的に活用して自らが経営を見直すチャンスとするか、あるいは、関係がないと考えるか、ということです。
 ここには中小企業発展のヒントがあります。上記の項目を丹念に研究して、これを経営管理の柱とすることで、企業の信用は格段に上ることになります。
 例えば最近では、ミートホープという食肉会社がとんでもない商品を売って、社会から指弾され廃業に至りました。この会社からコロッケを仕入れて販売をしていた会社が加ト吉という上場会社でした。本来なら加ト吉は被害会社ですから、社会から同情を得られるかと思いきや、管理責任を問われて非難されました。
 サプライヤーの行動規範を守ることは、社会に大きな安心を与えることに他なりません。それは、中小企業の生き残る道にもつながることです。
 私はよく外食をしますが、店に入っても「当店の仕入資材は、安全衛生基準を満たしたものを使用しています。食材はすべて国内産で、野菜については無農薬ないしは低農薬で栽培したものを使用しています」というような書き出しはありませんね。
今の時代的背景を考えると、こうした説明は是非必要だろうと思います。
さて、会計事務所としてこの行動規範を観た場合、そこにどのような使命があるかということです。

1中小会社の会計指針に基づき決算書作成をすること
 税理士事務所は、一般的に税法規準に基づいてお客様の決算書を作成していますが、これからはこの中小会社の会計指針を考慮して決算書を作成しなければなりません。
中小会社の会計指針を適用した場合、棚卸資産の評価、減価償却、貸倒損失や貸倒引当金、有価証券や会員権の評価、賞与引当金、退職給与引当金について大きな影響が出て参ります。

2決算書公開のお手伝い
 新会社法では、すべての株式会社に決算公告が義務付けられています(会社法440条1項)。中小企業にあっては、貸借対照表を広告しなければなりません。

3会計参与
 会社法329条において会計参与制度が謳われました。会計参与の資格は税理士等の職業会計人に限定されております。これは株式会社における計算の適正性確保が喫緊に課題であると同時に、企業の社会的役割としての信頼性がより問われる時代となったということです。

4書面添付
 税理士法33条の2第1項に、書面添付制度があります。書面添付制度は税理士がそのお客様である企業の決算書に対する品質保証書です。
 税務代理権限証書及び添付書面のある決算書が提出された場合、税務官公署の当該職員は、調査をする前に、当該書面を提出した税理士にその書面に記載された事項に関しての意見を述べる機会を与えねばなりません。
 私もこの書面添付制度は大いに活用しております。これ一つをとりあげても、時代は変わったなと思います。会社対官公署の関係は、より公明なものでなければなりません。

5SOX法の施行
 日本版SOX法は金融商品取引法の中の、内部統制などの関する一部の規定です。これは内部統制の整備を目的として作られたもので、上場企業に対して義務付けられ、不正を行った場合の経営者に対する罰則の強化を規定しています。
 内部統制を義務付けられているのは、上場企業だけですが、その子会社や取引関係にある会社はもちろん、上場企業と直接取引のない会社にも、間接的影響は及ぶと考えられています。それは先にも書きましたように、ミートホープと加ト吉の関係を見れば明らかなことです。

 以上1から5はバラバラに存在するものではなく、全て関連しております。それは一言でいえば会社の信頼性を内と外から創造するものであるということです。

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