自計化とは19.8.10(金)
その昔、会計事務所のサービスといえば元帳、試算表、決算書および申告書の作成だけで十分お客様の要求を満たしておりました。いや満たしていたというより、事務所もクライアントも会計事務所のサービスとはそのようなものであるとの認識しかありませんでした。あとは事務所が税務調査時に上手く対処すれば、それで良しとした時代が長く続きました。
しかし廉価なパソコンと会計ソフトの発展普及が、企業側での自計化を促す時代となって、既に久しいものがあります。
現在は、帳簿と試算表を作成するだけの自計化の時代は過ぎ去ろうとしています。今や会計そのものが、経営のよきコンサルタントであり、経営をサーポートし、経営をマネジメントする時代になりつつあります。
ところが経営者の皆様で、この会計の重要性に気がついていない方は結構いらっしゃいます。いまだに会計帳簿は税金と融資のためと考えている経営者が多いのです。
企業の経営状態は数字を正しく掴み、その意味を深く理解し、経営に数値目標を設定してこの改善を訴えることが大事なのです。例えば経営の変化は経営数値の変化となって顕れます。また貸借対照表と損益計算書を5期程度比較すれば、その間の大きなうねりが理解できます。今後経営をどのように導けばよいかも、そこから読めてきます。
また指標を分析し、他社との比較をすることで、自社経営の強みと弱みが理解できるものです。
利害関係者には経営の状態を知ってもらい、従業員にはその状態と改善点の理解を得ねばなりません。そのためには数値での説明が一番です。
現場で働いていらっしゃる多くの従業員さんは、自分はこれだけ働いているのに給料が低いと思っているのが普通です。働いていることが、どれだけ会社の利益に貢献しているかは考えていません。これは従業員に問題があるのではなく、経営陣が従業員に対して教育をせず、経営に共感を得る努力をしていないからです。
例えば従業員さんに重複仕入、仕入単価、クレーム件数は数値を使って正しく説明し、経営がどんなに大変ことであるかを説明すれば、給料が低いことに不満であっても、共感と納得は得られます。そうすることで従業員さんの創意や工夫が生まれてくるものです。
また営業マンには、販売のノルマを与えるだけでなく、販売した商品にどれだけの利益があったのか、あるいは売掛金の回収を早めることが会社にどのような利益をもたらすのかを説明し協力を求めねばなりません。定期的に打ち合わせをし、過去における販売や回収の状態と、現在のそれとを比較検討することで改善点を促すことが大事です。
これらは数値を用いて説明するのと、そうでないのとでは受ける印象がまったく違ってくるはずです。今や会計事務所は、その補佐的役割を担っております。
自計化を進めることで、経営の細部に渡った気づきが得られます。またそれができるような会計業務にする必要があります。会計事務所に帳簿の一切を丸投げし、会計が分らないことを自慢するようでは、社長は務まりません。
粗利益率1%の向上をめざそうとすれば、商品の構成から販売先、仕入先の選定、在庫管理、製造工程の工夫と検討すべき課題は多岐に渡るはずです。企業に永遠の命を与え、永続と繁栄の保証をする。自計化の本当の意味合いはこのようなところにあります。