調査の顛末
報告事項
職員各位
A社調査の顛末について
上記法人の調査は次のような経過を辿って行われ、調査のおいては下記のとおりの問題点の指摘がなされました。今後のためにその記録を残します。
調査に至るまで
・4月12日 午後
甲税務署にて法人2部門調査官河野太郎氏から書面添付先であるA社の意見聴取を受ける。
・5月3日
河野太郎氏からA社を調査したい旨の電話を受ける。調査日が5月17日と18日の両日と決定。
今回の調査における問題点及び反省点
・書面添付先として、A社を選定したのは基本的に無理があった。その理由として次の項目を挙げる。
(1)補助元帳(現金出納帳、預金出納長、得意先元帳、仕入先元帳、給与台帳等)が完備していないこと。またその改善が見込まれないこと。
(2) 記帳そのものが遅れがちであること
新会社法に従えば帳簿は法務省令に従い「適時」「正確」(会社法432条)に作成されることが要求されているのであるが今後においても、それへの対応が無理であると思われること。
個別的検討事項
・貸倒損失の件
B社に対する貸倒損失約××円の計上は、今期において一部の債権回収がなされており、結果から観察すると時期が早かったと言わざるを得ない。
関連法規 基本通達9-6-2
ただし、会計特有の問題、すなわち会計は期間計算であるという点に着目したとき期末時点での判断が判断として本当に間違っていたかどうかは問われてしかるべきである、判断した時点での検証が、調査時点で違ってきたときに当初の判断間違いだから、訂正すべきという理屈では、期間損益計算の論拠が破綻すると思うのである。この視点からの検討の余地はあるように思う。
・某研究所に試験を委託した試験研究費として18年11月に××円を支出しているは調査年度の費用とすべきか、現在進行年度とすべきか。
この試験研究は委託先の研究所において19年3月から開始されている。この支出した代金は19年2月末日(決算期末)に、研究の契約を解除した場合、××円の返還請求権がA社にあるのかどうかが問われるべきである。
この点は確認されないまま調査は終了した。もし返還請求権がないのであれば、19年2月期の費用として問題はないと思われる。
関連法規 法法22条3項二
・通勤交通費金一律×円支給の件
役員及び従業員に対して一律×円の通勤交通費を支給していて、かつ非課税としているのは、検討の余地がない。ただこれには社長の考えが強く働いており、事務所としては手の付けようがないところである。
この問題は、税務上の問題であると同時に従業員の実利と精神衛生の面から今後は検討すべきかと思われる。
・納期特例の件
社員数が10人以上となって久しいが、未だに納期の特例を継続している。
これは当事務所から過去にも指摘済み。ただ毎月月次で納めてもらった場合、納付書の記載ミスが発生しそう。年末調整時あるいは合計票作成時に頭を抱えるかもしれない。
・資料の収集等について
B社の貸倒処理の問題は、その貸倒処理に至った経緯を記したメモの保存がなく、意見聴取時に答えられなかったのが残念であった。
また試験研究費の支出についても金額が大きいにもかかわらず、事前に検討を十分に尽くしたとはいえず、同様の問題に関して今後に課題を残した。
・在庫の有無
調査官の河野さんより期末在庫に関しての質問を受けた。しかしこのA社は加工のみであり、注文を受けてから引渡すまでが期間が短いことを考慮するとその必要はないと思われる。
また、期末に完成在庫があるにしても、製品そのものは預かりであり、加工に要した加工経費のみが在庫を構成するのであるから、この点からも在庫の存在は無視されてしかるべきであろう。
・書面添付書類への記載
書面添付をする場合、事務所が作成する文書内容は、もっと具体的であるべき。
例えば、貸倒損失であれば、その相手先や、貸倒損失として認識した理由などを詳細に記すべき。
・良かった点
担当のC君が、A社とのやりとりの中で生じた監査証跡を、きちんと整理して保存していてくれたので、河野さんも、経費に関しては殆ど手を付けられることがなかった。この点は大いに評価すべきであり。他の企業に対しても同じようにして欲しいと思います。
総括
今回の調査は、結果として貸倒損失の扱いそのものに収斂されたように思う。
また、庶務から財務まで担当者1人に集中しており、当事務所としても限られた時間と顧問料の中ではフォローにも限界がある。このあたりの改善は今後とも当分は望めそうもないのであるが、もしA社の記帳事務が完成度の高いものであれば、当事務所の資料収集も余裕をもって出来たのではないかと思うとその点は悔やまれるのである。しかし今後とも、完全な帳簿作成は望めそうもなく、残念である。閲覧数: 1540