30 社員を社長のよき理解者に(1)
経営者が陥りやすい間違いは、命令をすれば組織は動く、と考えることです。確かに組織を動かす場合、指示命令は必要です。
しかし経営者が指示命令をして、動かせるのは、経営者の目の届く範囲にあるものだけです。考えてみて下さい。
例えば工場のなかで働いている社員について、あなたはその社員をどこまで理解していますか。
社員の悩みというのは、自らの健康、家庭環境、給料に対する思い、従業員仲間同士の関係、単調で退屈な業務、何よりも社員はあなたの存在を怖いものと捉えています。
ところであなたが心配しているには、利益のことであり、顧客に満足のいく製品を素早く作って納品を済ませることであり、仕事を沢山受注することであり、その回収を確実することであり、得意先の倒産を避けることであり、借入金を早く返すことなどです。
どうでしょう、あなたの思っていることと、社員の考えていることには、このように天と地ほどの差があるのです。
仕事をしていく上で、人というのは、自分がいつも考えていることは、人も同じように考えていると思っています。従って社員からすれば、自らの思いは社長も理解しているハズなのに、それについては何の回答もない、と不平に思っています。
一方社長であるあなたは、これだけ私が会社のことを考えているのに、社員は誰も私のことを分ってくれない、と思っているのです。ここに労使双方が陥りやすい間違いがあるのです。経営者が考えていることというのは、社員よりも、より切実で、しかも経営責任を一身に背負っていますから、リアリティに溢れています。社員には伝わってはいません。
なぜなら勤める、ということは、最初から真剣に生きるリスクを放棄して、楽を求める、ということだからです。
こうした労使の立場の違いを、是としたのでは、この厳しい環境で生きていけるはずがありません。そうです、社員をより活性化して、一人でも多くを社長の理解者にしなければなりません。さてどうしたものでしょうか。