消費税の問題点

中小企業金融円滑化法は来年の3月で切れます。この適用を受けている件数はおよそ285万件、金額は80兆円となっているようです。
この80兆円の内訳ですが、多分政府系の融資が大半を占めているだろうと推測しています。

シャープの電卓を買えば液晶の数字表示窓がポロッと外れ、シチズンの目覚まし電波時計は1年でアラームが壊れました。
詳細は省きますが、関与先でも、仕事をしてお金を貰えないケースが増えています。

以上の話のキイワードは「企業の貧困化」ということになります。
話は更に飛びます。鳩山元首相ですが、相変わらず人望がないようです。鳩山元首相は、自分を善人だと思っています。従って人も善人だと思っているのです。

 人は自分の裏返しで他人を理解します。自分を善人と定義すれば、人の悪は見えないのです。否、自分の悪も見えないのです。なぜ彼は自らを善人と思えるのか、ということですが、それは彼の生活体験の少なさと、想像力の貧困にあるのでしょう。

あるいは、未だに子供手当を貰うぐらいに豊かなのですから、この世に生活苦があるなどということに思いが届かないのかも知れません。これは鳩山元首相に限ったことではないように思います。

 前置きが長くなりましたが、この日本には貧して鈍した人と、そんなことの露知らない、豊かで鈍した2種類の人が居て、後者が今の日本の頂点にいることが、日本の不幸なのです。

企業も貧困化し、人も貧困化する背景にあるものの一つは「消費税」にあるのではないかということです。前回も消費税についてぼやきましたが、今回もぼやきます。内容が前回と同工異曲であることはお許し下さい。

 消費税の問題点は、負担者と納税者が違うところにあると考えています。このような税金の取り方は、所得税の源泉徴収にも見られます。源泉徴収制度は雇用する側が被雇用者から、所得税を預かり、これを国に納付するというシステムです。

源泉徴収は所得税の仮払いとして、労使関係という規律の中で行われるものです。従って毎月の手取りが少なくなるから給与を上げてくれ、というような話にはなりません。ところが消費税は違います。消費税は多段階課税になっております。

物やサービスが独立した経営体を渡るごとに課税売上と課税仕入の差額として計算して課税され、最終的には消費者が負担します。この最終段階において、納付者(事業者)と消費者(負担者)、すなわち「売り手」と「買い手」の利害が対立していることに大きな問題が隠されています。すなわち、消費者は同じものなら安く買うことができれば良く、売り手はそこに媚び諂いをします。
また昨今のことですから、ネット販売を含めどこからでも物が買えます。そうすると事業者は消費税を価格に転嫁することなく、仕入値を低く抑えることで、売値も抑えようと考えます。

こうしたところから、物流に二つの大きな流れが生じてきます。一つは消費税が8%になり、10%になる過程で、一部の経済は地下に潜るのではないかということです。消費税が10%になったとして、もし消費税が無ければ同業他社に比べれば、10%の価格競争力があることになります。消費税が地下に潜れば、法人税も所得税も地下に潜ることになります。

もう一つは小売業者が製造業者と一体化するようになるのではないでしょうか。このところの新聞紙面でも中小製造業においては、消費税の転嫁が上手くできないであろうことが書かれています。それなら小売業者が製造業を吸収すればいいことになります。既に大手の小売業は自社ブランドを立ち上げる方向にあります。

 消費税の問題点というのは、国内における商社、製造業、卸売業、小売業など、それぞれの流通過程における付加価値を削り、結果として、賃金を下げ、あるいは海外での生産を余儀なくされ、それらの向かうところ、失業者が出て、生活保護が増加する、という悪循環に陥れるところにあります。

この流れは消費税の導入とともに始まりました。この流れが止むことは、当分はないように思います。では、企業家はどうすればいいのでしょう。
消費税が上がるのであれば事業を地下に潜らせてしまえばいい、という発想は明らかに間違っています。私どもは日本という法治国家に生きているのです。
まともに国や事業を考える人間であれば、この選択肢は有り得ません。

しかし小売業が一貫して製造までをする事業体というのは、例えば既に有名なところではユニクロがあります。逆に最近の流れとしてファブレス化、すなわちメーカーであっても自ら製造はしないで、下請業者に全てを負託してしまう、とうようなことも起きています。

また最近シャープが、台湾の鴻海(ホンハイ)に株式参加をしてもらうだけでなく、海外にある製造工場の一部も鴻海に売却するという話も出てきています。事業部門も売るという話も出ています。サンヨー電機に二の舞になりそうですね。
勿論、こうした流れの全てが消費税に起因するものである、ということではありません。そこには韓国や中国の追い上げ、という事実があることも見逃せません。

過去15年ぐらいの話として、日本メーカーの技術者が土曜、日曜を利用して中国や韓国の企業に行き、これらの国の企業に技術を伝授していたという事実がありますから、そこにはやはり日本人の劣化が見られるのです。

この20年ほどの傾向として、全国チエーンのコンビニやスーパーなど、小売業者が大きくなりました。こうした業態の過当競争も、デフレすなわち小売価格を下げる要因として大きく寄与しているように思います。俗に「風が吹けば、桶屋が儲かる」といいます。

原因が複合して、デフレ経済となっているのですが、その大きな要因はやはり消費税にあるのであろう、というのが私の思いなのです。税制は一国の文化を創ります。中小企業もまあ暫くは、このような流れに身を置いて耐えることでしか、方法はないのでしょうね。

いつも思うのですが、税制は国家の文化を創ります。日本人が営々と築いてきた民度や国家の特長を踏まえた上での税制は出来ないものか。
それは決して今の消費税制度の延長にはないように思います。

前の記事

不況脱出大作戦~24財務

次の記事

26~給与の設計